episode.8 ページ8
*
岩本side
心配していた阿部の体調もエンディングまで危なげなくもち、無事に今日の公演を終えることができた。
座長として、リーダーとして、いつも以上に気を張って臨んだ舞台から降りて気が抜けそうになったが、今日はまだ果たさなければならないことが残っている。
「阿部、これから病院行ける？」
楽屋の隅にちょこんと座りメイクを落としている阿部に声を掛ける。
「え、あ、うん。もうすぐ出られるからちょっと待って。」
少し驚いた顔をしたものの、案外素直な返事が返ってきた。
思わず、”やけに素直じゃん”なんてからかってしまった。
阿「さすがにまだ公演続くし迷惑かけたくないからさ。早めに病院の薬で治したほうが良いかなと思って。」
「そうだな。そのほうが阿部も安心だろうし、俺らも安心だよ。」
今日だけは反省会をふっかに任せて、タクシーで病院へ向かった。
道中でも案外阿部はいつも通りで、ものすごく具合が悪いというわけではなさそうだった。
阿「アドレナリンってすごくない？俺いまなんともないんだけど。」
「なんともないならそれがいちばんだよ。」
病院に着き、受付を済ませて阿部を診察室に送り込んだ。さすがにお互いいい大人だから、そこまでは着いていかないよ？
さっきの様子だと、きっと過労とか夏風邪とかだろうか。
病院もさほど混んでいないし、すぐ戻ってくるものだと思って待合室の隅の方に腰掛けた。
それなのに、待てど暮らせど阿部が戻ってこない。
もう軽く30分は経っている。
普通の内科ってもっとサクッと診察終わるもんじゃないの？
何かあったのかとソワソワしていると、スマホに一通のメッセージが入った。
ピロンッ♪
【 From 阿部 亮平 】
すぐそこにいるんだから直接言えよと思いながらメッセージを開く。
「、、、え！？、、うそ、、」
【ごめん、インフルエンザだった。うつしたら悪いから先帰ってて？ほんとごめん、またちゃんと連絡する】
いやいや、ばか！置いて帰るかよ！
阿部には悪いがとりあえずそのメッセージは無視して、待合室で戻ってくるのを待った。
看「お大事になさってくださいね。」
その声の方に顔を向けると、さっきとは明らかに違うどんよりとしたオーラを纏った阿部が立っていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1118人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あお - 続きが更新されるのを楽しみにしてます。 (2021年5月6日 1時) (
レス) id: 5edf3afd73 (このIDを非表示/違反報告)
ユキト(プロフ) - 苦しくて泣いちゃうけど読み応えあります、大好きな作品です。 (2021年4月19日 1時) (レス) id: 08a263e11b (このIDを非表示/違反報告)
藍華(プロフ) - はじめまして！この作品を愛読させて頂いているものです。ほんとにお話を読むたび苦しくなるのですが、何回も読み返すくらい大好きな作品です! (2021年4月9日 0時) (レス) id: 55f4a21869 (このIDを非表示/違反報告)
恋した月(プロフ) - 初めまして、このお話が好きすぎるのでコメントさせてもらいます()どの描写もabらしくてSnらしくて本当に美しいくて苦しくて大好きです。これからも応援しています。 (2021年2月13日 17時) (レス) id: d6f1a4b68b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しぃ | 作成日時：2021年1月26日 12時
