episode.47 ページ47
*
阿部side
つい昨日まで、カメラの前でキラキラのアイドルをしていたはずなのに。
今俺がいるのはけたたましいモニター音が鳴り響く病棟のベッドの上。
ぶかぶかの病衣、腕から伸びる点滴の管。
都合よく目を背けてきた現実に、一気に引き戻された気分だった。
何も知らない人達に囲まれて仕事をしていれば、自分が一生治らない病気を抱えていることなんて忘れてしまう瞬間が沢山あって。
辛くても、その瞬間が心の支えでもあった。
だけど、ここへ来れば俺はあっという間に
『持病が悪化して緊急入院した患者』
でしかなくなる。
嫌でも病気と向き合わざるを得ないこの空間は、二度目でも慣れることはない。
医「阿部くん、入るよ〜？」
カーテンの外から先生に呼ばれる。
「、、はい…」
サッとカーテンを開けてベッドサイドに来た先生は、本当にここで良かったの？と。
職業柄気を遣って個室を手配しようとしてくれたんだけど、年配の人ばかりで気付かれて騒ぎになる心配もなさそうだし、何よりひとりは心細かったから大部屋を希望した。
あとは、メンバーに会いたくなかったから。
大部屋にいれば、面会にも来づらいかなと思って。
医「お仕事は都合付きそう？１週間じゃちょっと難しそうだから、10日から2週間くらいは居てもらおうと思ってるんだけど。」
告げられた入院期間は想像していたより少し長めだったけど、抵抗せずに受け入れた。
そんな俺を見て、先生の方が驚いていた。
「大丈夫です、もう、なんか、、仕事行きたくなくて、、」
思わず溢れた本音。
自分がここまで追い詰められていたことを改めて実感する。
医「そっか。今はまず、ゆっくり休んで。話はまた明日ね。」
みんなが優しいこの空間にいると、俺は更に弱くなる。
全てを忘れて目を閉じてしまいたいけど、ひとつやらなければならないことが残っている。
メンバーに、なんて言おう。
何度も何度も、打っては消してを繰り返した文章。
震える指で送信ボタンを押した。
『阿部です。
迷惑ばかり掛けて本当にごめんなさい。
体調を崩してしまい、二週間程入院することになりました。
退院したら、ちゃんと話します。
我儘でごめんなさい。今はひとりになりたいです。』
退院したらちゃんと話す、逃げたい気持ちと同時に生まれた、向き合わなきゃという決意でもあった。
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あお - 続きが更新されるのを楽しみにしてます。 (2021年5月6日 1時) (
レス) id: 5edf3afd73 (このIDを非表示/違反報告)
ユキト(プロフ) - 苦しくて泣いちゃうけど読み応えあります、大好きな作品です。 (2021年4月19日 1時) (レス) id: 08a263e11b (このIDを非表示/違反報告)
藍華(プロフ) - はじめまして！この作品を愛読させて頂いているものです。ほんとにお話を読むたび苦しくなるのですが、何回も読み返すくらい大好きな作品です! (2021年4月9日 0時) (レス) id: 55f4a21869 (このIDを非表示/違反報告)
恋した月(プロフ) - 初めまして、このお話が好きすぎるのでコメントさせてもらいます()どの描写もabらしくてSnらしくて本当に美しいくて苦しくて大好きです。これからも応援しています。 (2021年2月13日 17時) (レス) id: d6f1a4b68b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しぃ | 作成日時：2021年1月26日 12時
