episode.39 ページ39
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阿部side
久しぶりのふたりでの食事、誘われた理由がこのためだったと分かると胸がギュッと苦しくなった。
なんとか作り笑いで誤魔化して、俺らしくない下手な言い訳を並べてお開きに持ち込んだ。
すぐに家に帰る気にはなれなくて、近所の川沿いをふらふらと歩きながらいろんなことを考えた。
館さんの言うことは、側から見たらど正論。
でも今の俺にとっては綺麗事でしかなかった。
心配してくれているのは分かってる。
隠してる俺が悪いのも分かってる。
だけど、荒んだ心ではそれを素直に受け止めることができなかった。
病院に行ってるの、嘘なんじゃないかと思ってるんでしょ？
行ってるよ。
でも一生治らないんだもん、良くなるわけないじゃん。
『迷惑』
発せられた言葉のその部分だけが切り取られて頭にこびりつく。
どんなに必死で体調管理をしたって、予期せぬことが易々と起きるのがこの病気。
もう俺、どうしたらいいの。
自分を守るため、見えないように気付かないように必死に偽っていた心が、少しずつ決壊していくのを感じた。
家に帰って布団に潜り込んでも、色々なことが頭に浮かんでは俺を悩ませる。
この日を境に、まともな睡眠を取ることが出来なくなった。
ウトウトしていただけの時間を合わせてもたったの１時間。
どんなに体が重くても、否応なしに仕事へ向かう時間はやってきて。
メンバー全員が集まる楽屋は、いつもと変わらないはずなのに、不安定な心のせいか自分一人だけが隔絶された世界にいるような気分になった。
『いつも通り』そう思えば思うほど、いつもならしないミスを繰り返し、なんでもないことで涙が出そうになる。
あれ、これ俺やばいかも。
いつものようにサッと注射をポケットに入れてトイレに向かおうとした時に背後から聞こえた声。
それは、いとも簡単に俺の心を崩壊させた。
向「もぉ〜また阿部ちゃん待ちやん！はよご飯食べようやぁ〜」
佐「えーーー俺もう待てなーーい！」
楽屋でよく聞くただの戯言。
他意はないって分かってるのに、責められてるって、呆れられてるって、そう思ってしまった。
糸がプツンと切れたように、全てが嫌になった。
唇をぐっと噛み締めて、無理矢理笑ってみんなの元へ戻る。
「ごめんごめん！先お弁当食べよっか！」
俺はこの日から、注射を打たなくなった。
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あお - 続きが更新されるのを楽しみにしてます。 (2021年5月6日 1時) (
レス) id: 5edf3afd73 (このIDを非表示/違反報告)
ユキト(プロフ) - 苦しくて泣いちゃうけど読み応えあります、大好きな作品です。 (2021年4月19日 1時) (レス) id: 08a263e11b (このIDを非表示/違反報告)
藍華(プロフ) - はじめまして！この作品を愛読させて頂いているものです。ほんとにお話を読むたび苦しくなるのですが、何回も読み返すくらい大好きな作品です! (2021年4月9日 0時) (レス) id: 55f4a21869 (このIDを非表示/違反報告)
恋した月(プロフ) - 初めまして、このお話が好きすぎるのでコメントさせてもらいます()どの描写もabらしくてSnらしくて本当に美しいくて苦しくて大好きです。これからも応援しています。 (2021年2月13日 17時) (レス) id: d6f1a4b68b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しぃ | 作成日時：2021年1月26日 12時
