episode.4 ページ4
*
宮舘side
正直、目黒が声を上げる前から俺も気付いていた。
後で声をかけよう、そう思い続けて結局時が経ってしまった。
いつも少し引いたところからみんなを見ているポジションですなんて言うくせに、こんな大切な時に動けない自分が情けなくて、あの場で俺も気付いていたとは言えなかった。
だから、帰り際阿部ちゃんと話した後のふっかを誰よりも早く呼び止めた。
「ふっか、阿部ちゃんなんか言ってた?」
ふっかは少し困ったように笑いながら阿部ちゃんとのやりとりを話してくれた。
深「核心的なことはなにも、俺にも話してくれなかったよ。
ご飯も食べてるし睡眠も取れてるとは言ってたけど、何か隠してるのは明らかだよね。
あんまり言い過ぎても逆に阿部ちゃんを苦しめかねないから、何かあったらすぐ手を貸せるように気を付けて見ててあげることしか出来ないね。」
「そっか…」
深「そんな顔すんなって。逆に阿部ちゃんに心配されちゃうぞ?」
「ごめん、そうだよね。俺もこれからちゃんと見とくから。何かあったらすぐ言うし、言って欲しい。」
深「ん、わかった。まぁ、人の心配ばっかりじゃなくて俺らも何事もなく終えられるようにしっかりしないとな。」
いつものようにクシャッと笑ったふっかの顔を見て、少し心が軽くなった気がした。
次の日から、ふっかとの約束通りいつも以上に気を遣って周りを見るようにした。
阿部ちゃんはもちろん、そこに隠れて誰か我慢をしてしまってはいないか。
それからしばらくは、特に変わったことは無かったように思う。
ご飯に誘ってもいつも通り普通に来てくれたし、一時期の調子の悪そうな時に比べて食べる量もだいぶ増えている。
「阿部ちゃん、疲れてない?」
阿「最近みんなしてすごい心配してない?なんか逆にごめん、大丈夫だよ!ほら、ご飯も食べてるし!」
嘘をついているようには見えなくて、ただ本当に偶々見慣れないところを見てしまっただけだったのかな。
「あと半月以上残ってるから無理しちゃダメだよ。」
そう言うと阿部ちゃんは、それは館さんも同じでしょ、と笑う。
元末っ子に対して、ちょっと過保護になり過ぎたかもなあなんて思いながら、このまま何もなく千秋楽まで行ければいいななんて思った。
1118人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あお - 続きが更新されるのを楽しみにしてます。 (2021年5月6日 1時) (レス) id: 5edf3afd73 (このIDを非表示/違反報告)
ユキト(プロフ) - 苦しくて泣いちゃうけど読み応えあります、大好きな作品です。 (2021年4月19日 1時) (レス) id: 08a263e11b (このIDを非表示/違反報告)
藍華(プロフ) - はじめまして!この作品を愛読させて頂いているものです。ほんとにお話を読むたび苦しくなるのですが、何回も読み返すくらい大好きな作品です! (2021年4月9日 0時) (レス) id: 55f4a21869 (このIDを非表示/違反報告)
恋した月(プロフ) - 初めまして、このお話が好きすぎるのでコメントさせてもらいます()どの描写もabらしくてSnらしくて本当に美しいくて苦しくて大好きです。これからも応援しています。 (2021年2月13日 17時) (レス) id: d6f1a4b68b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しぃ | 作成日時:2021年1月26日 12時