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episode.24 ページ24

*
阿部side






そして、『これからのこと』を告げられた。






何に気をつけて生きていかないといけないのか。

薬のこと、発作のこと、合併症のこと。






先生の真面目な表情とは裏腹に、何を言われても自分の身に起きていることとは思えない。

俺自身どう受け止めたら良いか分からないこの状況、メンバーに打ち明けるなんてとてもじゃないけど出来なかった。






だから俺は、隠し通すことを決めた。





メンバーにもマネージャーにも入院していることは告げず、暫く実家で過ごすと嘘をついた。


幸い舞台後に数日いただいたオフは他の仕事も外してもらっていたから怪しまれずに済む。


本当は3週間くらい入院が必要だと言われたが、こまめな通院を約束してなんとか1週間で退院した。





怖くないと言ったら嘘になるけど、慣れない治療をうまく誤魔化すことに必死で、真っ向から病気について考える余裕も無かった。





同時に、あの日感じた『絶望感』にも、気付かないように蓋をして心の奥底にしまい込んだ。









1週間ぶりに帰宅した自宅。

部屋の片隅に積まれた大量の在宅医療機器の箱。

注射針に自己採血のキットに病院でよく見るアルコール綿。



嫌でも、自分が病気であることを思い知る。



できるだけ視界に入れないようにすれば、早すぎる仕事復帰に苦い顔をする主治医の言葉が浮かんだ。





『阿部さん、この注射だけは何があっても、命を繋ぐために打ち続けてくださいね。』





“命を繋ぐため”





言い換えれば、止めたら命はないということ。





ちゃんと出来るだろうかという不安と、
明日みんなにどんな顔をして会おうかという不安。





考え出したらどんどん怖くなってきて、病気だと告げられてから初めて泣いた。





眠れないまま迎えた朝は顔も気分も最悪で、余計に気が滅入った。





更に追い討ちをかけるように、今日の仕事は打ち上げのBBQの様子をYouTube用に撮影するもの。




食事の前に打たなくてはいけない注射をどこで打とうか、みんなにバレないだろうか。




ライブ前よりも心拍数が上がるくらいの不安が押し寄せたところに、マネージャーから到着の連絡が届いた。




とにかく行かなくては。




薬や医療機器、増えた荷物でパンパンになった鞄を抱えて家を出た。

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あお - 続きが更新されるのを楽しみにしてます。 (2021年5月6日 1時) (レス) id: 5edf3afd73 (このIDを非表示/違反報告)
ユキト(プロフ) - 苦しくて泣いちゃうけど読み応えあります、大好きな作品です。 (2021年4月19日 1時) (レス) id: 08a263e11b (このIDを非表示/違反報告)
藍華(プロフ) - はじめまして!この作品を愛読させて頂いているものです。ほんとにお話を読むたび苦しくなるのですが、何回も読み返すくらい大好きな作品です! (2021年4月9日 0時) (レス) id: 55f4a21869 (このIDを非表示/違反報告)
恋した月(プロフ) - 初めまして、このお話が好きすぎるのでコメントさせてもらいます()どの描写もabらしくてSnらしくて本当に美しいくて苦しくて大好きです。これからも応援しています。 (2021年2月13日 17時) (レス) id: d6f1a4b68b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しぃ | 作成日時:2021年1月26日 12時

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