episode.15 ページ15
*
阿部side
状況が一変したのは、翌日の早朝だった。
いつまでも鳴り止まない着信音で目を覚ますと、硬い床で眠ったせいで骨張った体に痛みが走る。
ぃって、、誰だよ、こんな朝早くに、、
横目に映る時計は、朝の７時を指していた。
起き上がりさえすればスマホはすぐ手の届く場所にあるのに、今はそれさえも思うようにできない。
息を切らしながらやっとの思いでスマホを手に取ると、知らない番号から3件、マネージャーからは慌てた様子のメッセージと数秒おきの着信がなんと10件。
まずはマネージャーに折り返すと、電話口の声もやはり慌てていた。
マ「阿部さん、すぐに家出る準備できますか？昨日の病院から電話があって、今すぐ大きな病院に行ってくださいって…阿部さんに掛けても全然繋がらないからって、緊急連絡先の僕に掛かってきたんです。」
「、、え、っっでもっ、公演が、、、っはあっ」
息が切れてまともに喋れない自分に驚く。
それでも、この期に及んで舞台に立つ意思は変わらない。
マ「阿部さん！このまま舞台に立てると思ってるんですか？！自分の体、自分が一番分かってますよね？診てもらったら何かできることがあるかもしれないじゃないですか！」
「も、、わかっ、た、から、っはぁ、、」
流石にこの状態が普通ではないことくらい分かっていても、もしドクターストップでも掛けられたら、そう思うと尻込みしてしまう自分がいた。
だけどマネージャーの言う通り、病院に行けば改善する何かをしてもらえるかもしれない。
幸い千秋楽の今日は夕方公演のみで入りはお昼頃。
なんとかなるかもしれない、と一縷の望みをかけてマネージャーの迎えを待った。
次に気が付いた時には、俺の肩を揺さぶるマネージャーの姿があった。
マ「阿部さん！聞こえてますか？！阿部さん！！！」
何度電話を掛けても応答がなく、合鍵で部屋に入ればこの有様。
俺はその場から少しも動けず倒れ込んでいたらしい。
あと少し気が付かなければ救急車を呼ぼうと思っていた、と。
余計な心配を掛けまいと、さっきから全然動けないくせに無理に立ち上がろうとして、派手に転倒してしまった。
自分の体が自分のものじゃないみたいだ。
結局マネージャーに抱えられ、半ば引きずられるような形で車に乗り込む。
この時はもう意識は朦朧としていて、病院に着いてすぐに乗せられた車椅子にも抵抗する余力はなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1118人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あお - 続きが更新されるのを楽しみにしてます。 (2021年5月6日 1時) (
レス) id: 5edf3afd73 (このIDを非表示/違反報告)
ユキト(プロフ) - 苦しくて泣いちゃうけど読み応えあります、大好きな作品です。 (2021年4月19日 1時) (レス) id: 08a263e11b (このIDを非表示/違反報告)
藍華(プロフ) - はじめまして！この作品を愛読させて頂いているものです。ほんとにお話を読むたび苦しくなるのですが、何回も読み返すくらい大好きな作品です! (2021年4月9日 0時) (レス) id: 55f4a21869 (このIDを非表示/違反報告)
恋した月(プロフ) - 初めまして、このお話が好きすぎるのでコメントさせてもらいます()どの描写もabらしくてSnらしくて本当に美しいくて苦しくて大好きです。これからも応援しています。 (2021年2月13日 17時) (レス) id: d6f1a4b68b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しぃ | 作成日時：2021年1月26日 12時
