. ページ21
.
お兄ちゃん、元気にしてるかな。
まだ考えると胸が少し痛いけど、離れてみてからちょっとずつ、お兄ちゃんのことを消化できるようになってきている。
早く私もちゃんとした恋がしたい。
あの日、幸せそうなお兄ちゃんを見てそう思えたのは私の心理的な成長だと思う。
蓮にも言われたけど、多分わたしここに来てから少し変わったんだろうな。自立心っていうのかな、そういうのが強くなったんだろう。
恋ねぇ、……恋。
失恋(って言っていいのかわかんないけれど、特殊だから)したばっかだし、そんなにすぐに恋愛しようみたいな気はない。
でも淡く、純粋な普通の恋愛に憧れはある。
考えてみたら私、お兄ちゃんのことばっかで、いままで誰かと付き合ったこととかないけど、この歳でそれってやばいのかな。
この前も、深澤さんにAちゃん彼氏いないの？って驚かれたけど、このくらいの歳の女の子ってみんなそういう恋愛とか、してるものなんだろうか。
周りに女の子の友達がいないからわかんないや。ほんとつくづく、私の世界って狭いな。
『渡辺さんって私くらいの歳の時、恋愛とかしてました？』
「っ、はあ？」
買ったばかりのグミをもう開けて、歩きながら食べていた渡辺さんは、私の唐突の質問にわかりやすく目を見開いて手を止める。
「……そんなん聞いて、どうすんのお前」
『どうって、…なんかちょっと気になったっていうか、…私の仕事って家に篭ってできるじゃないですか、だから出会いもないしこのまま独り身なのかなとか思ったら突然不安になったので、渡辺さんの話でも聞いて参考にしようかなーって』
参考になるのかわからないけど。
そのルックスだったら適当に遊びまくってた、とかもありそうだし。
期待を込めて渡辺さんの横顔に視線を向ける。
「あー………」
しかしその期待とは裏腹に、渡辺さんは居心地が悪そうに苦し紛れな声を出した。
「……覚えてねぇわ、そんな昔のこと」
またまたー、昔ってたった5年くらい前のことなのに？と冗談っぽく言い返そうかと思ったけど、彼の表情を見て止めた。
「つか、暑いから早く帰るぞ」
あぁ、腑に落ちない。
聞かなきゃよかった。だってあの顔、
────絶対、過去になにかあった顔だ。それも明るくない恋愛。
電灯に照らされた彼の横顔の暗さが、以前の自分に重なって見えた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4253人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
彩花(プロフ) - 初めまして！私は渡辺派なので少しでも絡みのある回を見ると勝手に微笑んでしまってます笑 続編楽しみにしてます！ (2023年4月10日 0時) (
レス) id: 7fda05ffd5 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - 咲里以さん» ジリジリすぎて大丈夫かな？と思っていたので、そのように言っていただけて安心しました、！ありがとうございます、頑張ります！ (2022年6月29日 17時) (レス) id: 1ae247aadb (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - ここあさん» 更新遅くて申し訳ないです、、そう言っていただけて嬉しいです、！ (2022年6月29日 17時) (レス) @page36 id: 1ae247aadb (このIDを非表示/違反報告)
咲里以 - 初めまして！ジリジリ進んでるような違うような…ムズムズきゅんしています。続き楽しみにしているので、主様の無理ない範囲で更新待っています！ (2022年4月13日 2時) (レス) @page34 id: d6172fab00 (このIDを非表示/違反報告)
ここあ - 続きがすごく見たくなりました！！ (2022年4月1日 2時) (レス) id: 5e0c35ed0e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こゆき
| 作成日時：2020年12月1日 20時
