Scene32 いつまでも ページ32
手術終了。その知らせを受けてAの両親は真っ先に動いた。術後のAは今までとは別の部屋にいるそうだ。そう聞いてシュウは甘いような苦いような感じがした。
Aの両親が医師の説明を受け、Aのいる病室に入ってしばらく。シュウとフブキはもどかしい思いをしながら息を凝らしていた。心臓の音が聞こえそうでただ怖かった。
「2人とも…」
病室のドアが開き、Aの父親が手招きする。その表情からは、なにも読み取れなかった。
「いいんですか…?」
一歩一歩足の裏に重みを感じながら、2人は病室に足を踏み入れた。
Aは、人工呼吸器をつけて薄い胸をゆっくり上下させていた。横にあるモニターは規則的に拍動数を刻んでいる。病的なほどに色が白く、また、類まれな美貌の持ち主の彼女は、恐ろしいほどそのベッドに似合っていた。美人薄命、という言葉を思い出しそうになって、フブキはそんな自分を責めた。
「手術は大きな問題なく済んだらしい。あとは、目が覚めれば大丈夫みたいだ。体力的に、厳しいかもしれない」
フブキはゆっくりとAの元へ歩み寄り、その手を握った。恐ろしく華奢に細い腕には、彼にはよくわからない管がいくつも繋がっていた。
「Aさん、頑張って…」
いつか明るく話をしてくれた彼女は、今ではすっかり彫刻のようになっている。悔しいほどに美しい彫刻に。
でも確かに今、Aは生きている。同じ時間を生きている。フブキもAも同じように、今は確かにここにある。
センチメンタルになるフブキと裏腹に、シュウは冷静だった。
手術はうまくいったのかもしれない。聞く話からして、それだけで奇跡と言えるのだろう。しかし彼女は、目が覚めるかわからない。最悪、植物人間だ。大人が「厳しい」と言うことが「無理」に近いということを、シュウはなんとなく悟っていた。だからこそ、喜んでいいのか悲しんでいいのかわからず、立ちすくんでいた。
「…シュウさん?」
微動だにしないシュウに、フブキは問いかける。
「…待ちます。彼女が目を覚まして、もう一度あの笑顔を見せてくれるまで、僕は待ち続けます!」
もう迷いはなかった。何があろうと愛そうと誓った。
「ありがとう…」
Aの母親は
少年は声にならない声で派手に静かに叫んだ。積み木の崩れ落ちそうな一片を拾って、元の場所を探していた。
ほらほら、あの人から言いたいことがあるみたいですよ☆
シスコ「お前はオレだけ見とけばいいんだよ」
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通行人 - ふと思い出して、久しぶりに来てみました。やはり引き込まれる。 (2019年9月5日 19時) (レス) id: 7f966a9c98 (このIDを非表示/違反報告)
瀬央(プロフ) - 美桜さん» ありがとうございます!少ない脳を振り絞って書いただけありました(笑) トプ画のことまでお気づきとは…さすがです! (2019年2月15日 23時) (レス) id: a6baa0d096 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - あと、トプ画ですが、人物を抜いてオーダーされていましたね!そこがとても内容と合っていてさすがだな〜とセンスに感動しています 次作品も楽しみに待っていますね〜^^ (2019年2月15日 22時) (レス) id: 02de3cf915 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございました!!!フブキもシュウも彼等らしい爽やかな感じで、読んでいて温かくなりました^^とても読みやすい文章に文間、ストーリー構成、とても勉強になります!私も瀬央さんを見習って、風景と心理描写をシンクロさせたラストへ進みたいです (2019年2月15日 22時) (レス) id: 02de3cf915 (このIDを非表示/違反報告)
瀬央(プロフ) - みずきさん» そう言ってもらえるととても嬉しいです。ベイバをこよなく愛してるから、学校の作文より本気になって書いてるかもしれません(笑) (2019年2月12日 23時) (レス) id: d89c1d2e97 (このIDを非表示/違反報告)
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