Scene30 鍵 ページ30
2人が到着した病院は、国内有数の大病院だった。
「ここなら…」
Aはいるのかもしれない。
しかし、建物の中に入ったところで、彼らは次に何をするのかまでは考えていなかった。ロビーに入ってソファーに腰かけてから、シュウは失望した。
「ダメだ…わからない……。彼女がどこにいるかなんて、そもそもここにいるのかすらも…!」
手で顔を覆うシュウに、フブキは言った。
「何言ってるんですか、Aさんはここにいます!聞いてみましょうよ」
「無理だ。俺たちは彼女の名字も知らない。第一、聞いたところで職務上の関係で教えてくれるはずがない」
シュウは頭を抱えてしまった。フブキは困った顔をした。シュウの言うことは、めちゃめちゃでもあり、正しくもあったからだ。
「Aちゃん?あなたたち、今、Aちゃんの名前を言ったのかい?」
上から落ち着いた包み込むような声が降ってきた。シュウとフブキはばっと顔を上げた。そこにはしわが深く刻まれた優しい顔があった。
「あなたたち、もしかしてシュウ君とフブキ君?Aちゃんと一緒にテレビで見たのよ」
おばあさんは上品な笑みを浮かべた。シュウはすぐに反応した。
「ええ、僕たちが紅シュウと墨江フブキです。おばあさんは?彼女の知り合いなんですか?」
「私は梅子。Aちゃんと同じ病室なの。Aちゃんがよくあなたたちのことを話していたわ」
間違いない。Aはこの病院にいるのだということがわかり、フブキは梅子に次々と質問する。
「彼女は今どこに?手術はもう終わったんですか?何か言っていました?」
「お、おい、一度にたくさん質問しすぎだ…」
「ふふ、元気があっていいじゃない」
一度梅子はそう笑って、次に真剣な顔をした。
「Aちゃんは今手術の最中よ。上手くいくかは、まだわからない。それと…彼女、手術に行く直前、シュウ君たちに会いたいなぁって言ってたの」
フブキは口の中がからからになるのを感じた。
「どうすれば…彼女に近づけますか?」
自分でも何を言っているのかわからなくなりながらシュウはきいた。
「そうね…もしかしたら、彼女のご両親に会えるかもしれないね。お二人は、あそこにいるよ」
梅子はしばらく離れた場所に腰掛ける男女を示した。
「それは、僕らが話しかけても大丈夫なんでしょうか?」
「ええ、私もお話ししたことがあったけど、とても優しくて気さくな方たちよ」
2人はぱっと笑顔になった。
「わかりました。何から何までありがとうございます」
ほらほら、あの人から言いたいことがあるみたいですよ☆
シスコ「お前はオレだけ見とけばいいんだよ」
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通行人 - ふと思い出して、久しぶりに来てみました。やはり引き込まれる。 (2019年9月5日 19時) (レス) id: 7f966a9c98 (このIDを非表示/違反報告)
瀬央(プロフ) - 美桜さん» ありがとうございます!少ない脳を振り絞って書いただけありました(笑) トプ画のことまでお気づきとは…さすがです! (2019年2月15日 23時) (レス) id: a6baa0d096 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - あと、トプ画ですが、人物を抜いてオーダーされていましたね!そこがとても内容と合っていてさすがだな〜とセンスに感動しています 次作品も楽しみに待っていますね〜^^ (2019年2月15日 22時) (レス) id: 02de3cf915 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございました!!!フブキもシュウも彼等らしい爽やかな感じで、読んでいて温かくなりました^^とても読みやすい文章に文間、ストーリー構成、とても勉強になります!私も瀬央さんを見習って、風景と心理描写をシンクロさせたラストへ進みたいです (2019年2月15日 22時) (レス) id: 02de3cf915 (このIDを非表示/違反報告)
瀬央(プロフ) - みずきさん» そう言ってもらえるととても嬉しいです。ベイバをこよなく愛してるから、学校の作文より本気になって書いてるかもしれません(笑) (2019年2月12日 23時) (レス) id: d89c1d2e97 (このIDを非表示/違反報告)
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