Scene26 まだなにも知らない彼 ページ26
Aがいなくなって、フブキはフーっと息をひとつついて、その場に腰をついた。本当はとっくに腰が抜けてるところだ。
彼は膝を抱えて唖然としていた。すぐ横の植え込みから鳥が出てきて、彼を不思議そうにつぶらな瞳で見た。フブキも鳥を横目に見て、それからまた顔を膝に沈めた。
「は〜〜〜」
ため息しか出ない。自然と涙は出なかった。それはきっと、彼がAの持病の事実にショックを受けていても、まだ希望を持って信じているからなのかもしれない。
さて、その一方で、何も知らないシュウの方は、バトル後すぐに消えたフブキを不審に思い、また今日来ているはずのAの姿も見受けられなかった。2人とも先に帰ってしまったのかなと思いながら、明日の決勝に向けての戦略を練りながら会場を後にしようとしていると、そこにはフブキの姿が。
「⁉ フブキ、具合悪いのか?」
シュウはしゃがみこんで、フブキの顔を伺うようにした。
「…いいえ。なんでもないです」
フブキはそう言って腰を上げた。
「本当か?それなら良かった」
「ええ。それより、明日のバトル、絶対に勝ってくださいね。僕、信じてますから」
「当然勝つさ。相手もなかなかの強敵だけど」
「どんな高い壁だって、希望さえ持っていれば、絶対に超えられるって、Aさんが言ってました。彼女も応援してますよ、きっと」
「フブキ、Aに会ったのか?今はどこにいる?」
“A”というキーワードに飛びついたシュウに、隠しておくのは悪いと思いながらも彼女の気持ちを優先したいという思いから、フブキは約束を守ることを選んだ。
「彼女は、もう帰りました。シュウさんにも会えたらよかったんですけど」
「一言でも挨拶しておきたかったけど、遅かったか」
シュウはさも残念そうにため息をついた。
「でも、明日のバトルにも集中しなきゃいけないしな」
「そうですね、期待しています。…それじゃあ、僕は帰るので!」
「ああ、そうか。家はどっちだ?俺はこっち」
「あ、残念。僕はあっちです」
2人が指差した方向は、
「さようなら、シュウさん」
「フブキも、また明日」
シュウとフブキは反対の方向へあるいていく。さっきとは別の羊雲が、そんな2人を面白がるようにだらだらと流れていった。
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ほらほら、あの人から言いたいことがあるみたいですよ☆
シスコ「お前はオレだけ見とけばいいんだよ」
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通行人 - ふと思い出して、久しぶりに来てみました。やはり引き込まれる。 (2019年9月5日 19時) (レス) id: 7f966a9c98 (このIDを非表示/違反報告)
瀬央(プロフ) - 美桜さん» ありがとうございます!少ない脳を振り絞って書いただけありました(笑) トプ画のことまでお気づきとは…さすがです! (2019年2月15日 23時) (レス) id: a6baa0d096 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - あと、トプ画ですが、人物を抜いてオーダーされていましたね!そこがとても内容と合っていてさすがだな〜とセンスに感動しています 次作品も楽しみに待っていますね〜^^ (2019年2月15日 22時) (レス) id: 02de3cf915 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございました!!!フブキもシュウも彼等らしい爽やかな感じで、読んでいて温かくなりました^^とても読みやすい文章に文間、ストーリー構成、とても勉強になります!私も瀬央さんを見習って、風景と心理描写をシンクロさせたラストへ進みたいです (2019年2月15日 22時) (レス) id: 02de3cf915 (このIDを非表示/違反報告)
瀬央(プロフ) - みずきさん» そう言ってもらえるととても嬉しいです。ベイバをこよなく愛してるから、学校の作文より本気になって書いてるかもしれません(笑) (2019年2月12日 23時) (レス) id: d89c1d2e97 (このIDを非表示/違反報告)
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