第43話『倒れた美門』 ページ44
彩side
「そこ、もっと早くターンできない?」
翼の声が上がり、若武の怒声が響く。
「無理だろ。トンボ3回も切ってんだからさ。できるもんなら、おまえ、やってみ。」
翼は黙って部屋の端まで下がり、そこから連続でバク転を3回、空中で一回転して、床に降りるなり素早くターンして見せた。
「こうすればいいじゃん」
若武は、まるで河豚みたいにふくれあがる。
「どうせ俺は、お前よりヘタだよ」
ああ、コンプレックスが復活。
「そんなことないよっ!若武くん、一生懸命でとってもとってもかっこいいから!」
拗ねている若武に、杏奈ちゃんが声をかける。
それは全然悪意ゼロで、むしろ本心で若武を心から褒めていた。
杏奈ちゃんって、だいぶ独特な趣味してるかも。
私がそう思った瞬間だった。
立っていた翼がふらっとし、そのまま横向きに倒れたんだ。
とっさに駆け寄った黒木君が抱きとめなかったら、モロにテーブルに頭をぶつけるところだった。
「おい、どうしたっ!?美門、美門っ!」
「美門くんっ・・・!」
叫んだ黒木くんと杏奈ちゃんが、焦った様子でこっちに目を向ける。
「意識がない」
ええっ!?
「診せて」
上杉くんがそばに寄り、黒木君と二人で翼を床に横たえた。
ぐったりと首を垂れている翼は、まるで折り取られた白い花のようだった。
上杉くんがその脇にひざまずき、翼の袖をめくって手首を掴む。
「速いな」
そう言いながら手首の内側に親指を押し当て、自分の時計に視線を落とした。
私たちは息を呑んで見つめるだけ。
翼の手首で脈を測った上杉くんは、もう一方の腕でも同じ作業をし、鋭い視線をこっちに流した。
「救急車、呼べよ」
救急車っ!?
「これだけ脈が速いと熱もかなりある。手遅れになると、まずい。」
上杉くんのその言葉を聞いて、杏奈ちゃんは半泣きになる。
今にも泣き出してしまいそうな杏奈ちゃんの視界を、小塚くんがさりげなく自分の背中で遮った。
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アーヤ(プロフ) - 住滝良さんのと、少し文が違って「ここ、本文あれだったよなw」って楽しいです! (2023年5月11日 21時) (レス) @page47 id: d9605ef4e5 (このIDを非表示/違反報告)
アーヤ(プロフ) - すごく面白いです!このまま、ストーリ続けてください。(あれ、完結してたっけ?)少しだけわがまま言うと、kzの皆は彩の親友(恋人?)ダァーッ! (2023年5月11日 21時) (レス) @page37 id: d9605ef4e5 (このIDを非表示/違反報告)
桜@ひなた - 面白すぎです!私はアーヤと若武推しです! (2023年2月12日 10時) (レス) id: fb711c9d23 (このIDを非表示/違反報告)
澪(プロフ) - まこさん» ありがとうございます!!黒木くんかっこいいですよね! (2020年10月30日 23時) (レス) id: 2b665a7700 (このIDを非表示/違反報告)
まこ - すごく面白いです! 私も黒木くん推しです! 更新待ってます! (2020年10月30日 17時) (レス) id: e335c0e9f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:澪 | 作成日時:2020年3月13日 20時