笑顔の仮面は知っている【探偵チームKZ事件ノート】

第29話『驚き』 ページ30

彩side


細かく観察されて、私は恥ずかしくなり、慌ててその場から離れた。

杏奈ちゃんはにっこり笑って5人を見た。

「でも、こういうドレスって、やっぱり女の子の憧れだからね！」

なんか、上手くフォローする子だな。

私は、内心しょんぼりしながら、でも、まるで気にしていないみたい顔で、辺りを見回した。

すると、奥に庭があることに気づいたんだ。

え・・・ここビルの上なのに。

半信半疑で近寄ってみると、それは空中に作られた庭園だった。

普通の庭と同じで、芝生があったり、いく種類もの木が植えられていたりするんだけれど、周りが全部、空だから、空中に浮かんでいるような感じなんだ。

初めて見るその光景に、私は目を奪われた。

この瞬間だった。

木と木の間を、さっと影が走り抜けたんだ。

何か、いる！

でも・・・何だろ！？

「めずらしい？」

黒木くんがそばに寄ってきて庭園を見回した。

「これ、今の流行だよ。ビルの上に土を運んで、庭を作るんだ」

へぇぇ。

「人間はやっぱりコンクリートより、土とか緑が好きだってことだね」

その声を聞きながら私は、さっき影が走った辺りを注意深く、しっかりと見た。

でももう何も見えなかったし、した枝も動いていなかった。

気のせいかなぁ。

ここはビルの上なんだし、何かがいるなんて、あまり考えられないよね。

「この店、『M＆M』って書いてあるけれど」

ウィンドーの近くで、小塚くんの声がした。

「オーナーは、美門の親戚だって言ってたよね」

私が振り返ると、翼が軽く頷くところだった。

「M＆Mは、ミッキー・ミランの略。ミッキーっていうのは、アメリカではマイケルの愛称なんだ」

え、そうなの。

じゃ、ミッキー・マウスの本名は、マイケルなのかなぁ。

「ミッキー・ミランは、俺の祖父マイケル・ミランのこと。Ｍ＆Ｍって商標を持つフォーマル・ドレスのデザイナーなんだ。ここは日本の店舗の一つ」

私たちは、杏奈ちゃん以外みんな、目をまん丸にした。

だって、祖父がアメリカ人ってことは、翼はクオーターってことだもの。

それで顔立ちやスタイルが、日本人離れしてるんだ。

「おまえ、4分の3日本人だったわけ？」

若武も初めて知ったらしく、驚いた様子だった。

翼は、ちょっと肩をすくめる。

「そうでもない」

え？

「祖父のマイケルは、フランスでフランス人女性と結婚して父が生まれて、その父が日本に留学して、日本企業に就職し、日本女性と結婚して俺がいるから」

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