第15話『入れ替え』 ページ16
彩side
私は、人目につかない廊下の端まで行って、携帯電話を出し、内蔵されている電話帳を開いて黒木くんの番号を見つけ、それを押した。
呼び出し音は、全然鳴らず、いきなり耳元で低い声がした。
「はい。」
急だったから戸惑ってしまったけれど、間違いなく黒木くんの声だった。
「あの、ごめん、立花ですが。」
ちょっとギクシャクしてしまった。
「まだ電話借りてるけど、その、」
黒木くんはふっと笑い、それからこう言った。
「若武のこと?」
私は心臓が縮み上がるような気がした。
だって私が何も言っていないのに黒木君が言い出すってことは、かなりの事態が起こっているに違いなかったから。
「何があったの」
答えを待ちながら私は、恐ろしいことをいくつも考えた。
若武が試合中にひどい怪我をしたとか、帰る途中に交通事故に遭ったとか、エトセトラ。
あぁ神様、どうか取り返しのつかないような事じゃ、ありませんように!
「昨日、KZチームのメンバーの入れ替えがあっんだ。それで、あいつ、ポジションのことで監督に文句つけてさ」
わっ、そんなことしたんだ。
「出場停止を宣告された」
それって・・・試合に出られないってことだよね。
でも、1回か、2回とか、1ヶ月とかでしょ。
その後は、また復帰できるんだよね。
「その上、逆ギレして、こう言ったんだ。そのくらいなら、もう無期限出場停止か、いっそ除名で結構ですって」
あ、あ・・・バカ武。
「で、監督も怒っちゃってさ。では君の希望通りにしてやろうって話になって、若武は無期限出場停止、かつ除名処分になった。つまり若武の名前はKZの名簿から消され、今までの試合で立てた記録も全て抹消されて、本人は退団させられるんだ」
私は、頭を殴られたような気がした。
若武はKZメンバーじゃなくなるんだ。
今まで試合で出した記録も、成果も全部無かったことにされて、若武がKZで輝いていた過去は、全て消し去られてしまうんだ。
なんとも言えない気持ちだった。
私はぎゅっと携帯を握りしめた。
「それ、もう、どうにもならないの?」
黒木くんは、大きなため息をついた。
「ならないね。今日、正式発表されたから」
そうなんだ・・・。
若武はもう、KZじゃないんだね。
私は力が抜けて、その場にしゃがみこみそうになった。
「いったいなんだって、監督に文句を付けたりしたの。そんなこと、しなければよかったのに」
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アーヤ(プロフ) - 住滝良さんのと、少し文が違って「ここ、本文あれだったよなw」って楽しいです! (2023年5月11日 21時) (レス) @page47 id: d9605ef4e5 (このIDを非表示/違反報告)
アーヤ(プロフ) - すごく面白いです!このまま、ストーリ続けてください。(あれ、完結してたっけ?)少しだけわがまま言うと、kzの皆は彩の親友(恋人?)ダァーッ! (2023年5月11日 21時) (レス) @page37 id: d9605ef4e5 (このIDを非表示/違反報告)
桜@ひなた - 面白すぎです!私はアーヤと若武推しです! (2023年2月12日 10時) (レス) id: fb711c9d23 (このIDを非表示/違反報告)
澪(プロフ) - まこさん» ありがとうございます!!黒木くんかっこいいですよね! (2020年10月30日 23時) (レス) id: 2b665a7700 (このIDを非表示/違反報告)
まこ - すごく面白いです! 私も黒木くん推しです! 更新待ってます! (2020年10月30日 17時) (レス) id: e335c0e9f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:澪 | 作成日時:2020年3月13日 20時