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「A!卒業おめでとう!!」
「ありがとうございますオッパたち。」
2年前のあの日から、すっかり馴染み深くなったアジトのプレハブ小屋。
今日は私の編入先の高校の卒業式だった。
「Aもすっかり大人の女性になったねぇ。」
「やめてくださいジニオッパ。
……でも、オッパの卒業までここにいられなくてすみません。
もし、すべて片が付いたら顔だけ出しますね。」
いいんだよ、と笑うオッパ。
BTSという組織名を掲げ能力の研究やら人助けをしていた独立組から、兄が生きているかもしれないという情報が入ったのが1年前。
何でも、幻術の能力を持つチェ イェジュンという男の目撃情報が出たらしく。
更にそこは今は亡き祖父母の家のある地方だったのだ。
初めは訳が分からなかったが、保険金は降りたのに遺体が送られてこないことから死亡説自体を疑った皆さんが依頼や研究の合間に情報を集めてたのだとか。
本当に、いい仲間たちに巡り合えたとその時だけは、私をあの高校に送り込んだ最初の高校に感謝をした。
「お兄さん、しっかり探しておいで。
この2年で身を守るすべはすべて教えてきたから、大丈夫だよ!」
「ありがとうございますホソギオッパ。」
実は指導教員に言われるまで能力の距離制限を知らなかったのが悔しくて、実践的に使い方から応用まで鍛え上げてもらった。
だが兄の情報が出てからは体術や口術といった、いざという時に身を守る術までも教えられていたのだ。
「もし見つかんなかったら帰ってきてもいいんだぞ。
パシリ位には使ってやる。」
「素直じゃない男はモテませんよユンギオッパ。」
心配なら素直にそう言えばいいのに。こういう独特な言い回しにもこの2年でだいぶ慣れた。
「でも、本当に大丈夫か?誰か連れて行っても……」
「ダーメ、だよ……父親じゃないんだから。」
「可愛い子には旅をさせよってことわざが東の島国にあると教えたのはヒョンじゃないですかぁ。」
「ナムオッパ、テヒョイオッパとジミニオッパの言う通りですよ。
私は大丈夫です、オッパ仕込みなので。」
なんやかんやで心配なのか、目に涙までにじませ始めるオッパたちを宥める。
「じゃ、今夜の便で出るのでそろそろ。」
寂しそうに手を振るオッパたちに背を向けてアジトを出る。
「それで?見送りの言葉はないの?グク。」
透明化した彼に背中越しに声をかける。
「ない。
気を付けて行ってこい。
また会おうな、A。」
「うん、そっちも元気で。」
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