9.桜色ティアトロップ ページ10
▽▲▽
「ヨーヨー?金魚すくい?それかカタヌキ?」
『ううん、あれ、射的』
「射的?」
彼女が指差した屋台は、
1番彼女に似合わなさそうな遊びだった。
勝手な偏見に過ぎないけれど、
なんとなく…あまり上手くはなさそう。
少し不思議に思いながらも、近くのゴミ箱に袋を捨てながら言ってみた。
「やりに行く?」
『うん…っ!』
.
「はいよ、2人分ね」
「『ありがとうございます』」
所狭しと並べられた景品は、
そのほとんどが女の子向けらしきもの。
おもちゃが大半を占めていて、
他もタンブラーだったりハンカチだったり。
特に取りたいものも見つからないし、
どうせならAに何か取ってあげたいな。
そう思って隣で頑張る女の子の方を見れば、
既に5個中3つのコルク玉を失っている。
「何か狙ってるの?」
『あのタオル…、青いやつ』
棚に置かれた"3等"の箱の上の方には、
青とピンクのスポーツタオルが下がっていた。
刀と違って銃を扱った経験はない僕だけど、
あれくらい的が大きかったら取れそうだ。
既に玉をなくしてしまったAに代わり、
片目で箱を睨みながら1発打ち込んだ。
「あ〜、兄ちゃん惜しいねぇ」
玉の進路は僅かに左側にズレていて、
箱は揺れたけど倒れてはくれなかった。
2発目3発目と微調整を繰り返しても、
なかなか箱が倒れるほどの玉は当てられない。
気分も少し諦めモードになってきた4発目、
発射したコルク玉が勢いよく箱にぶつかった。
『わぁっ…!』
「おぉっ!」
おじさんは僕からコルク銃を受け取ると、
すぐにタオルを上から下ろしてくれた。
どうやら青とピンクで1セットだったらしく、
何を思ったのかニヤッと笑われた僕。
おじさんが期待するようなこと、ないんだな。
たぶんそれは僕が1番望むことに過ぎないんだ。
「3等の景品ね、おめでとさん」
「ありがとうございます」
ボーッとしていたAの手を引いて、
参道の人混みから少し外れた道へ出た。
振り向いたところでAを見ると、
まだ僕の手の中のタオルを眺めたまま。
相当欲しかったんだろうか、少し悔しそうにする顔が可愛くて、僕は思わず頬を緩めた。
「はい、あげるよ」
本当ならもっとカッコよく取ってあげたかったんだけどね。
青とピンクのタオルを差し出すと、
Aは無言でピンクの方だけを受け取った。
「…青は?欲しいんじゃなかったの?」
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指切り(物理) - 素敵な作品ありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ。いやぁホントに神すぎます! (2022年4月5日 10時) (レス) @page25 id: dfc5bee49e (このIDを非表示/違反報告)
さつむいこん(プロフ) - ぱらさん» 全部の言葉が光栄でしかないです、めっちゃ幸せです…!!こちらこそありがとうございます🙇♀️ (2021年11月11日 17時) (レス) @page24 id: 423a130570 (このIDを非表示/違反報告)
ぱら - 楽しく読ませて頂きました!一個一個の言葉が胸に染みました…!素晴らしい作品をありがとうございます!! (2021年11月8日 17時) (レス) id: 1cfc9a3f72 (このIDを非表示/違反報告)
さつむいこん(プロフ) - ミユモンさん» わあぁありがとうございます光栄です…っ!!のんびり更新ですがどうぞお付き合いください🙇🏻♀️ (2021年10月28日 23時) (レス) @page11 id: dc07c220d6 (このIDを非表示/違反報告)
ミユモン(プロフ) - 言葉の使い回しがすごく好みです…更新頑張ってください🙌✨ (2021年10月28日 20時) (レス) id: 2ad0dd50d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さつむいこん | 作成日時:2021年10月7日 23時