6.めめしぃ ページ7
参考資料
▽▲▽
日が暮れかけた蒸し暑い夕方、
僕は家から逆方面へ行く電車に乗った。
スマホを見れば、待ち合わせの1時間前。
浮かれている自分を自覚して恥ずかしくなってしまうけど仕方ない。
だって今から好きな子に会うんだから。
それにしても疲れた、今日の部活。
人並み以上に体力はある僕だけど、
前世の体力をまるごと引き継げていれば…。
前世の記憶を持って現代を生きる中で、
これほど悔しく思ったことはなかった。
「右側の扉が開きます───」
さすが地元で人気の祭りと再認識するほどには人が多く、降りる人波は激しい。
改札を通り抜けて少し歩くと、
それっぽい人影をすぐに見つけられた。
「ごめん、待った?」
『うん、それなりに』
「…ごめん」
『全然。行こ』
素直というかなんというか、
この子は思ったことがすぐ口に出る。
本人は全然悪気がある訳じゃないんだけど、
こういう所が人に誤解される原因なんだろう。
そんな思考を頭に浮かべるよりも先に、
僕はその子の姿に目が離せなくなっていた。
「……浴衣…、なんだね」
『お母さんが着ていけって。
普段着る機会ないしね、せっかくだし』
薄桃色の生地に咲いた白椿の大輪に、
赤い帯が映えている。
あの子が歩く度に帯締めについた白い花のチャームが揺れて、鈴を鳴らしたような音が耳にとどいた。
本当ならとても小さな音のはずなのに、
それすら拾ってしまう僕はどうかしている。
目や耳、きっと僕の五感全てが、この子の微々たる所作さえも見落とすまいとしているように思えた。
「……そっか」
"似合うね"とか"可愛いね"とか、
たったそれだけの言葉が出てこない。
表せないんだ、そんな言葉如きでは。
そう思ってしまうくらい、
僕の隣にいる女の子は綺麗すぎて。
『行こ、私やきそば食べたい』
「…うん」
僕は前に立って歩き出す。
今もまだ心臓がおかしいんだから、
この子を見続けていたらどうかしてしまう。
人混みをかき分けて進んでいけば、
屋台の立ち並ぶアーケードに到着した。
やきそばの匂いを見つけて振り向けば、
ちょうどあの子が僕のシャツを掴んでいて。
「どうしたの?」
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指切り(物理) - 素敵な作品ありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ。いやぁホントに神すぎます! (2022年4月5日 10時) (レス) @page25 id: dfc5bee49e (このIDを非表示/違反報告)
さつむいこん(プロフ) - ぱらさん» 全部の言葉が光栄でしかないです、めっちゃ幸せです…!!こちらこそありがとうございます🙇♀️ (2021年11月11日 17時) (レス) @page24 id: 423a130570 (このIDを非表示/違反報告)
ぱら - 楽しく読ませて頂きました!一個一個の言葉が胸に染みました…!素晴らしい作品をありがとうございます!! (2021年11月8日 17時) (レス) id: 1cfc9a3f72 (このIDを非表示/違反報告)
さつむいこん(プロフ) - ミユモンさん» わあぁありがとうございます光栄です…っ!!のんびり更新ですがどうぞお付き合いください🙇🏻♀️ (2021年10月28日 23時) (レス) @page11 id: dc07c220d6 (このIDを非表示/違反報告)
ミユモン(プロフ) - 言葉の使い回しがすごく好みです…更新頑張ってください🙌✨ (2021年10月28日 20時) (レス) id: 2ad0dd50d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さつむいこん | 作成日時:2021年10月7日 23時