5.夜もすがら君想ふ ページ6
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「そう言えば最近あの子を見ないなぁ」
「そうだね、風邪かな」
「夏なのに?吹部はコンクール前だろ?」
上の空の返事は炭治郎には通じるけど、
我妻善逸には通じない。
最近妙に詮索してくるからやめてほしい。
確かに何もないと言えば嘘になるけど。
都大会を1位で通過した僕達は、
きたる関東大会のため合宿が決まった。
あの子のことは知ってる、風邪じゃない。
どこかのプロ講師が来てくれるとかで、
トップクラスの部員が遠征に行ってるんだ。
「あっ俺さ、禰豆子ちゃんと祭り行くんだ!」
「俺もカナヲと。時透くんも一緒にどうだ?」
「さすがに悪いよ…。僕も相手はいるから」
それだけで勘のいい先輩方は理解したようで、
正反対の2人のリアクションを受け止めた。
「…そうか、良かったなぁ時透くん!」
「はぁ!?お前普段女子なんて興味ないですぅみたいな顔してるくせにやることやりやがって!誰よ相手!Aちゃんなら許さねーよ!」
「うっさいなぁ…、なんだっていいでしょ」
というか、なんであの子と親しげなんだよ。
あの子を名前で呼べる男子は僕だけだと思ってたのに、そうじゃなかったことが恨めしい。
こんなことをいちいち思う僕は、
いったいどれほど嫉妬深いんだろうか。
「…ってか本当にAちゃんなんだ。
アンタよく誘えたね、1年の高嶺の花じゃん」
「何それ」
「知らねーの?あの子の噂。
この春からもう何度も告られてるらしいぜ」
「あぁ、俺も聞いたぞ。
なかなか多くの男に口説かれてるとか」
「……は?」
夜道は危ないよって言った時、
あの子には全くもって危機感がなかった。
単に男に絡まれた経験がないのかと思っていたけど、むしろ大ありじゃないか。
理不尽と分かりながらイラッとすると、
炭治郎がまた口を開いた。
「でも全部ことごとくフッているらしいなぁ」
「そうだよ、だから誘えただけ快挙だよ。
普通のあの子なら即お断り案件だぞ?」
下げたと思ったら上げてきて、
いったいこの先輩たちの思惑はなんだろう。
そんなことを疑いつつも、
心の中は淡い期待でいっぱいだった。
関東大会は8日後、夏祭りは6日後。
3年の先輩の最後を賭けた大会と同じくらい、
祭りの日が楽しみで仕方なかった。
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指切り(物理) - 素敵な作品ありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ。いやぁホントに神すぎます! (2022年4月5日 10時) (レス) @page25 id: dfc5bee49e (このIDを非表示/違反報告)
さつむいこん(プロフ) - ぱらさん» 全部の言葉が光栄でしかないです、めっちゃ幸せです…!!こちらこそありがとうございます🙇♀️ (2021年11月11日 17時) (レス) @page24 id: 423a130570 (このIDを非表示/違反報告)
ぱら - 楽しく読ませて頂きました!一個一個の言葉が胸に染みました…!素晴らしい作品をありがとうございます!! (2021年11月8日 17時) (レス) id: 1cfc9a3f72 (このIDを非表示/違反報告)
さつむいこん(プロフ) - ミユモンさん» わあぁありがとうございます光栄です…っ!!のんびり更新ですがどうぞお付き合いください🙇🏻♀️ (2021年10月28日 23時) (レス) @page11 id: dc07c220d6 (このIDを非表示/違反報告)
ミユモン(プロフ) - 言葉の使い回しがすごく好みです…更新頑張ってください🙌✨ (2021年10月28日 20時) (レス) id: 2ad0dd50d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さつむいこん | 作成日時:2021年10月7日 23時