孤独なトランペッター【時透無一郎】

4.金曜日のおはよう ページ5

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『お母さんは音楽教師、お父さんはペット奏者。
2人とも帰り遅いし海外出張も多いから』


「音楽一家なんだ…」


『言うほどだけどね』




"孤高のトランペッター"
"孤独なトランペッター"

そんな2つの代名詞のうち、
1つ目の方はよく分かった気がした。




「君っていつもここで吹いてるの？」


『…なんだか"君"って呼ぶ人新鮮』


「君と喋ってると話が飛ぶね。
君って嫌？じゃあなんて呼んだらいい？」


『いや別に嫌悪を抱いたわけじゃなくて』


「じゃあAって呼ぼうかな」


『へ…！？』




新鮮なのはそっちの方だろ、
名前で呼んだだけで赤くなるんだから。

もちろん僕に恋愛感情がないのは分かってる、
相手が女子でも同じ反応をするんだろう。


それでも、この子を名前で呼べる唯一の男子になりたかった。




「無一郎でいいよ、皆そう呼ぶし」


『…分かった、じゃあ無一郎くんにする』




やっぱり孤高のトランペッターじゃない。

ちょっと踏み込んでみれば分かるんだ、
高嶺の花だと思ってたけどそうじゃなかった。


普通の可愛い女の子。

ふんわりしていて、でも強くて。
ずっと横で見ていたくなる子なんだ。









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つくづく自分って単純だと思う。
気づいたら、ふっと口に出ていた。




「となり町のお祭りって、知ってる？」


『あぁ、毎年あるよね。規模も大きいし』



「行かない？一緒に」




夕日に照らされる金色のトランペットが、
彼女の両手の中でひときわ強く輝いた。

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