孤独なトランペッター【時透無一郎】

22.世界は恋に落ちている ページ23

▽▲▽




「何年も前から？会って1年も経ってないよ？」


『そうだね。でも、ず〜っと前から』




ニコニコしながらそう言うA。
なに、まさか記憶でもあるの？

ちょっとだけ湧いた淡い期待に賭け、
少し質問をしてみる。




「どれくらい前から？」


『…ふふ、100年くらい前』


「100年前か、壮大だね」


『今思えばずいぶん壮大な恋だと思うよ〜』




今思えば、ね。
僕もずいぶん物語チックな恋だったと思うよ。


どっちも死ぬ最低な結末の恋なんて、
きっとシェークスピアにも負けないよね。

しかもそれが当たり前の世界線だったんだから、
なかなかに変な思考持ってたよな、お互いに。




「そうだね、あっけなく死んじゃってさ」


『……しかもあの世で再開したりしちゃってさ』




…やっぱり覚えてたんだ、この子も。
じゃあ、煉獄家の縁側でした約束も覚えてるかな。




「じゃあ話は早いよね」


『全部分かってるつもりだよ』


「ほんとに？」


『うん』




彼女の後頭部と背中にそっと手を回し、
顔を近づけること数十cm。

鼻先が触れあいそうな距離に、
Aが分かりやすく頬を赤らめる。




「一生かけて君を守ると誓うから」


『うん』


「僕とずっと一緒にいてね」


『…はいっ』




だいすき の4文字を聞く前に、
最愛の女の子の唇にそっとキスを落とした。


鬼によって引き裂かれた霞柱と炎柱の恋は、
霞も炎も鬼もない世界でもう1度巡り逢った。

これからはずっと2人で一緒にいよう。
夜も昼も関係ない世界で、大好きな君と。

23.最愛のトランペッター→←21.地球最後の告白を

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す