トラウマと気胸(雅紀) 4 ページ4
翔サイド
「しょ、にぃ、ここにいて？」
「うん、ここにいるから。大丈夫」
救急外来に付いて処置室のベッドに寝かされた雅紀は落ち着きなく瞳を揺らし、俺の手を離そうとしない。
そんな雅紀をまるで幼子をあやすように、ゆっくり優しい言葉を掛け、手を擦ってやる。
「雅紀、目は開けたままにしててよ、ね？
翔も僕もここにいるの見えるでしょ？」
恐怖からか、すぐに目を瞑ってしまう雅紀に、これ以上フラッシュバックが酷くならないように、智にぃも優しく言う。
そこへ救急の医師が入ってきた。
「レントゲンの結果、胸腔ドレナージをした方が良いと判断しましたので、今から処置しますね？」
その言葉で雅紀の顔は一層不安そうになり、俺をすがるような目で見ている。
「まーさき、大丈夫だよ。ちゃんと麻酔もしてくれるから。
それか軽く鎮静かけて貰おうか？その方が良い？」
「怖い…」
俺の質問に答えることなく、怖いとだけ言う雅紀。
「ははは、困ったヤツだなぁ。分かった、分かった、怖くないようにして貰おうな？智にぃから説明してもらう？」
智にぃはコクコク頷く雅紀を見て、頭を撫でるとカーテンを抜けて処置室を出て行った。
暫くして、智にぃと一緒に入ってきた医師は、
「ジアゼパム入れますね。眠くなったらそのまま、寝ちゃって下さい」
って、言いながら側管から薬をゆっくり時間を掛けて追加した。
「SpO2以外もモニタリングさせて下さいね」
パルスオキシメーターだけを付けられていた雅紀に心電図や血圧計などのモニターが追加されていく。
これからドレナージをするからだと分かっていても、沢山の機器に繋がれる身内を見るのは、やはり辛いものだ。
体が右側臥位にされても雅紀は薬が効いたのか、安定した寝息を立てている。
腕が大きく上げられ、俺が刺した針はそのままに、消毒液が丁寧に塗られて穴あきドレープが掛けられた。
機械の規則的な電子音しか聞こえない中、担当医の滅菌グローブを嵌める"パチン"という乾いた音がやけに大きく響いた。
担当医が肋骨の位置を確かめながら麻酔薬を注入する場所を探している。
いよいよ針が刺されると思うと、まるで自分に起きることの様に身構えていた。
医者として何度も目にして来た光景なのに、ビビってる自分のヘタレぶりに、思わず溜息を吐いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 228人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
虹(プロフ) - 智宮SKさん» 智宮SKさん、返信ありがとうございます！良かったー(*^O^*)気に入って頂けて。また機会がありましたらリクエストお願いします！これからもどうぞよろしくお願いします(^o^ゞ (2018年12月8日 23時) (
レス) id: d02e7023d3 (このIDを非表示/違反報告)
智宮SK(プロフ) - ありがとうございます！先程読ませていただきました。こんなに早く作っていただけるとは思っていなかったので驚きです！家族の優しさと暖かさに溢れているとっても可愛い作品で、心が暖かくなりました。これからも応援しています！ぜひまたリクエストさせてください！ (2018年12月8日 22時) (レス) id: 386f8f3e08 (このIDを非表示/違反報告)
虹(プロフ) - 智宮SKさん» 智宮SKさん、リクエスト終了しました。part7で公開しています。ぜひご覧下さい。ご希望に添えてると良いのですが…(*^O^*) (2018年12月8日 22時) (レス) id: d02e7023d3 (このIDを非表示/違反報告)
虹(プロフ) - 桜＊潤さん» 桜＊潤さん、コメントありがとうございます！可愛い診察、伝わって嬉しいです♪話を無理やり繋げてしまいましたけど、こちらも伝わって良かったです。これからもよろしくお願いします(^O^) (2018年12月7日 14時) (レス) id: d02e7023d3 (このIDを非表示/違反報告)
桜＊潤(プロフ) - 翔パパが体調崩すのは珍しいけど色々あったからだろうけどね。でも可愛い診察されたら回復も早いよね。 (2018年12月6日 19時) (レス) id: ed324fff49 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：虹
| 作成日時：2018年12月5日 16時
