君のいる朝 04 ページ8
ちょっかいといっても、髪を勝手に謎の形状に結ったり顔に落書きをしたり、飲み水とコーヒーを差し替えたり……という平和なものだ。
Aは初対面のメイヴに「泥棒猫」と頬を膨らませながら告げられてからというもの、言葉の意味はわからずともすっかり萎縮するようになった。
「とめないでねくーちゃん。私、やられっぱなしは性にあわないわ」
なんのことかはさっぱりだが、メイヴにそう命じられてから、狂王も傍観気味だ。命に関わりのないのなら大丈夫だろうというマスターの言葉もあって、だが。
メイヴは客観的に見て、クー・フーリン【オルタ】の「主」といっても差し支えのない存在である。
クー・フーリンが
サーヴァントになっても自身への絶対の自信は衰えないメイヴの強さを、驕りだとキャスターは言うが、それに同調もしたことはない。なぜならばその価値観は所詮、キャスターの中のものさしでしかないからだ。
狂王はメイヴを否定しない。彼女の願いなくして、
狂王はここにいないからだ。
酒の席で口にした折、キャスターは苦笑した。
「どうして"俺"は妙に義理堅いんだろうなぁ」
義理、なのだろうか。振り返ってみると、わからない。少なくとももう、あの時と同じように他人事だと鼻で笑い、酒を煽ることはできないだろう。
バーサーカー。狂戦士。殺戮の上でのみ君臨する。
倫理も正義も、当然ない。とうにそんなもの抜け落ちている。強くあるだけ。ただそれだけの存在。
ーーーーけれど幼子と触れていると、そんな己が揺らぐのだ。
メイヴの存在についても、キャスターの言葉についても、立ち止まって考えることなどしなかった。
<レイシフトを開始します>
アナウンスが響く。コフィンに乗り込めば、間もなく戦闘だ。衝撃に備えて目を閉じたオルタの耳に、Aの声が飛び込んできた。
「くー」
「あ??」
ぱたぱたと管制室へと駆け込んできたらしい。モニターに顔が映る。後ろには弓兵の姿もあった。
「くー、えっと、怪我、怪我はしないで。それから、」
言い募るAの声をかき消す、無機質なカウントダウン。
〈5.4.3.2.1ーーーー〉
「いってらっしゃい」
寂しそう笑うAを最後に、狂王の意識は強制的に混濁に呑まれた。
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Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 碧依さん» わわわわ感想ありがとうございます!!2度もいただいてもったいない……!は、発狂!そこまで萌えていただけて嬉しいです!いつも応援ありがとうございます、3部頑張ります! (2018年1月11日 0時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - ありささん» はじめまして!感想ありがとうございます!1章から読んでいただけて嬉しいです!3章楽しみにしていただけている気持ちに答えられるよう頑張ります、応援ありがとうございます……! (2018年1月10日 16時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
碧依(プロフ) - 第2部完結おめでとうございます!最後の方は超絶キュンキュンして悶えながら読んでました← もう心の中で発狂してました← 第3部も続くとのことで、とても嬉しいです! 心待ちにしています! これからも頑張って下さい! (2018年1月10日 14時) (レス) id: e83e0a514a (このIDを非表示/違反報告)
ありさ(プロフ) - はじめまして、一章から楽しく読ませていただいております!三章が凄く楽しみです!これからも頑張ってください!! (2018年1月10日 13時) (レス) id: 5124bcd214 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - いよりさん» はじめまして!感想ありがとうございます!1章かは2章まで読んでいただけて嬉しいですありがとうございます……!3章もハラハラドキドキ、きゅんきゅん多めな展開を目指して頑張りますので、よろしくお願いします! (2018年1月9日 21時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Sandoriyon0000 | 作成日時:2017年12月13日 23時