君のいる朝 03 ページ7
「ねぇねぇ、エミヤさん。これがあのだし巻き玉子になるの??」
「あぁ……そんなに不思議かね?」
「だってあの卵の色はもっと綺麗だったもの。それにもっとふわふわしてた」
溶いたことでややこしが切れた卵の状態を言っているらしい。火を通せば卵が凝固し、色が変わることすら知らないAに、あくまでもエミヤは優しい。
「さぁて、何故そうなったかはこれからわかる。よく見ておくといいさ」
卵を熱した鉄の上に注げば、じゅうと、低く美味しそうな音が弾ける。
「さっと火を通して、土台を作る。これを巻いていくとあの形になる」
Aは疑わしいのか、じぃと湯気を立てる卵を見ている。しかしすぐに顔色は変わる。
「わぁ……!」
くる、くると、箸のみとは思えない鮮やかな手さばきで卵が巻かれる。それを2度、3度と重ね、竹でできたーーーー確か簀巻きとかいう器具の上にそっと降ろす。熱々のうちに包み、最後にぎゅうと絶妙な力加減で巻目をしめれば完成のようだ。
どこにも焦げのない鮮やかな黄金色。ほくほくと立ち上る湯気。そこに摩り下ろした大根と、鰹節が乗る。
「さ、完成だ。君らのぶんだから持っていけ」
「はぁい!!」
「醤油も忘れずに」
「しょーゆー!!」
「こらっ! 厨房でバタバタするんじゃない……って、聞いていないな、全く」
小さな身体が跳ねるように動く。エミヤは仕方ないと言いたげに笑った。
狂王はといえば、妙な胸の疼きに眉を寄せていた。
歩く以前に立つことすら困難だったAが、走っている。もう立つだけで息が切れ、この尾にしがみつくこともない。
祝福してやるべきなのだろうに、どうも納得がいかなかった。
「くー、はやく、さめちゃう」
椅子を引いて叩いてと、あの手この手で一生懸命急かすA。狂王は息をつき、ひとまず胸中は追い出した。
<じゃあオルタとメイヴちゃん>
<ちゃん、じゃなくて??>
<メイヴさま!!! 様です!! はい!! 交代ね!>
慌ただしい通信のあとすぐ、レイシフトの準備完了のアナウンスが入る。管制室を通り過ぎ、オルタはひとり、槍を片手にその時を待つ。
(メイヴと俺と交代、か。まぁあの弓兵がいる限りは、メイヴも手は出さんだろう)
槍の突き刺さった幼子と、それを抱いて離さなかった狂王。
その光景がメイヴには何かしらの衝撃を与えたらしかった。
以降、Aを見るたびにちょっかいを出したがる。
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飯テロが書きたかったの回
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Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 碧依さん» わわわわ感想ありがとうございます!!2度もいただいてもったいない……!は、発狂!そこまで萌えていただけて嬉しいです!いつも応援ありがとうございます、3部頑張ります! (2018年1月11日 0時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - ありささん» はじめまして!感想ありがとうございます!1章から読んでいただけて嬉しいです!3章楽しみにしていただけている気持ちに答えられるよう頑張ります、応援ありがとうございます……! (2018年1月10日 16時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
碧依(プロフ) - 第2部完結おめでとうございます!最後の方は超絶キュンキュンして悶えながら読んでました← もう心の中で発狂してました← 第3部も続くとのことで、とても嬉しいです! 心待ちにしています! これからも頑張って下さい! (2018年1月10日 14時) (レス) id: e83e0a514a (このIDを非表示/違反報告)
ありさ(プロフ) - はじめまして、一章から楽しく読ませていただいております!三章が凄く楽しみです!これからも頑張ってください!! (2018年1月10日 13時) (レス) id: 5124bcd214 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - いよりさん» はじめまして!感想ありがとうございます!1章かは2章まで読んでいただけて嬉しいですありがとうございます……!3章もハラハラドキドキ、きゅんきゅん多めな展開を目指して頑張りますので、よろしくお願いします! (2018年1月9日 21時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Sandoriyon0000 | 作成日時:2017年12月13日 23時