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朝と君と待雪の花 11 ページ41

「おねがい、もらって。あなたがいいの」

息も止まりそうな強さで抱きしめられる。それを望んでいた心は歓喜で高鳴った。鋭く煌めく赤い刃。
ああ、神様、どうかこの喜びのまま時をとめてーーーー見上げた彼の瞳に、自分だけが映っている。同じ気持ちが通っているーーーーー
ぽとりと、花が手から落ちて、Aは目が覚めた。

「あ」

鮮明だった夢が、実体をなくす。後悔のようにはらはらと涙がこぼれて、こぼれて、とまらない。

「A」

低い声に呼ばれて、どうしてかわっと叫びだしたくなった。手まくらされていたようだ。すぐ目の前の首筋にすがる。

「……悪い夢でも見たのか」
「ううん、ちがうわ……たいせつな、ゆめ。わたし、あなたに言わなきゃいけないことがある気がしたの」
「……大切なことなら、そのうち思い出すだろ」
「でも」

ぐす、と鼻をすすると、彼はそっと囁く。

「泣くな」

頬に、慰めのように唇があてられた。冷たい彼の温度と、自分の高い温度が、肌の上で交わるーーーー
そんなことをされたのは初めて、びっくりして涙が引っ込んだ。瞬きのあと、最後の雫が転がって、自分の唇を濡らす。

「泣くな、A」
(あ……)

すい、と、顔が近づく。震える呼吸を、そっとのみこまれた。ぴったりと重なる、薄い肌。その時の安堵と、充足に、Aはさとる。

(すき……あなたが、すき)

音もなく、静かに離れていく。口付けの意味を問うつもりはなかった。ただ、この胸に確かな感情が焼き付けられたことが、嬉しい。
決して、忘れない。
頬を包む手、伸ばされる尾が肌をかすめるくすぐったさ、きっと本人も気がついていないだろうーーーー微笑んで、Aを映す、赤い眼差しを。

もう一度、確かめるように降ってくる低い温度を、Aは喜びのまま受け止める。
ああ、神様、お願い、どうか、叶うなら、どうか、このまま、ずっとーーーーここにいたい。彼のそばに。

最初は短く、だんだん長く、何度も何度も。なにか見えない力に引き合わされるように、ぴったりと。すきだ、すきだと、鼓動は高鳴って訴えた。離れたくないと、心は叫んだ。

言葉になって溢れるより早く、彼が塞いでくれる。それでよかった。奪われる心地よさをAは知っている。

このまま呼吸も、鼓動も、すべて。

(この人に、あげたい)

激しく望んだ思いは、祈りとは呼べない。自分の気持ちに溺れそうだ。

ーーーーー
夢の内容は戯曲「森は生きている」より

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Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 碧依さん» わわわわ感想ありがとうございます!!2度もいただいてもったいない……!は、発狂!そこまで萌えていただけて嬉しいです!いつも応援ありがとうございます、3部頑張ります! (2018年1月11日 0時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - ありささん» はじめまして!感想ありがとうございます!1章から読んでいただけて嬉しいです!3章楽しみにしていただけている気持ちに答えられるよう頑張ります、応援ありがとうございます……! (2018年1月10日 16時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
碧依(プロフ) - 第2部完結おめでとうございます!最後の方は超絶キュンキュンして悶えながら読んでました← もう心の中で発狂してました← 第3部も続くとのことで、とても嬉しいです! 心待ちにしています! これからも頑張って下さい! (2018年1月10日 14時) (レス) id: e83e0a514a (このIDを非表示/違反報告)
ありさ(プロフ) - はじめまして、一章から楽しく読ませていただいております!三章が凄く楽しみです!これからも頑張ってください!! (2018年1月10日 13時) (レス) id: 5124bcd214 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - いよりさん» はじめまして!感想ありがとうございます!1章かは2章まで読んでいただけて嬉しいですありがとうございます……!3章もハラハラドキドキ、きゅんきゅん多めな展開を目指して頑張りますので、よろしくお願いします! (2018年1月9日 21時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Sandoriyon0000 | 作成日時:2017年12月13日 23時

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