朝と君と待雪の花 01 ページ30
狂王の目覚めはすぐにマスターの耳に届いた。
｢オルタ！！ よがっ゛だよ、ごっふぉ、えっふぇっっくじゅー！！｣
すぐさまキャスターが引っ張ってベッドへと押し込んだ。オルタはぼんやりとそれを見送り、ひとまずは起き上がる。
｢調子はどうかな｣
カルテを手にドクターが現れた。問診だろう。オルタは全て素直に答える。
｢じゃあ、狂化の際の記憶もあるんだね？｣
｢ああ。……どうとでも処断しろ、異論はねぇ｣
｢ひとついいかい？｣
ドクターは穏やかに問うてきた。
｢あの場にいたみんなの話を聞いていると、今回の狂化は、どうも君自身の感情の、なんていうかな、ストッパーが外れたような感じに思えたんだ。きっかけがなにかあったんじゃないかい？｣
｢……アレのことでごちゃごちゃとうるさい野外が気に入らなかっただけだ｣
思い出すだけでぶん、と尾がしなる。抑止がどうの異物がどうのと、知ったことではない。
｢狂化は個人的な理由だ。マスターを巻き込んだことを、大半が良くは思わんだろう。だがそれでアレをどうこう言うのはお門違いだ、責めるなら俺を責めればいいものを｣
さきほどちらと目線のあったキャスターのまなざしには、不快と憤りが渦巻いていた。眠っている間にキャスターがどんな行動に出たのか、手に取るように予想がつく。
｢ドクター。もし今後アレを処断するなら、その時は俺が殺す。アレは俺のものだ。他人の手にかかるなど我慢ならん｣
｢……そんなことはないといいけどね。君の望みはわかったよ｣
ドクターの問診と診断で、3日間の休養を言い渡された。眩しくてかなわない治療室を出る。
ルーン、それもスカサハのものが霊基に働きかけた気配がある。おかげで倦怠感はない。3日あれば戦闘可能の身体に戻れる。
しかし暇ができても、健全なサーヴァントであれば食事だ風呂だと楽しみがあるのだろうが、あいにくと狂王はそちらの方面にとんと食指が動かない。部屋に戻るにせよキャスターと鉢合わせになるのは面倒だ。今は冷静じゃない。
そういえば、プロトから奪い取った部屋はどうなっているのか。ふと思い立って向かう。
カルデアの角、ならぬ端部屋の戸を開けると、プロトが本を片手に土いじりをしていた。
｢げぇ、オルタ｣
苦々しく眉を寄せたが、プロトは追い返さなかった。せっせと鉢に土を入れていく。
｢……何してる｣
｢あん？ 見てわかんねぇか、花植えてる｣
｢ここに花が咲ける土地なんかねぇぞ｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 164人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 碧依さん» わわわわ感想ありがとうございます！！2度もいただいてもったいない……！は、発狂！そこまで萌えていただけて嬉しいです！いつも応援ありがとうございます、3部頑張ります！ (2018年1月11日 0時) (
レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - ありささん» はじめまして！感想ありがとうございます！1章から読んでいただけて嬉しいです！3章楽しみにしていただけている気持ちに答えられるよう頑張ります、応援ありがとうございます……！ (2018年1月10日 16時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
碧依(プロフ) - 第2部完結おめでとうございます！最後の方は超絶キュンキュンして悶えながら読んでました← もう心の中で発狂してました← 第3部も続くとのことで、とても嬉しいです！ 心待ちにしています！ これからも頑張って下さい！ (2018年1月10日 14時) (レス) id: e83e0a514a (このIDを非表示/違反報告)
ありさ(プロフ) - はじめまして、一章から楽しく読ませていただいております！三章が凄く楽しみです！これからも頑張ってください！！ (2018年1月10日 13時) (レス) id: 5124bcd214 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - いよりさん» はじめまして！感想ありがとうございます！1章かは2章まで読んでいただけて嬉しいですありがとうございます……！3章もハラハラドキドキ、きゅんきゅん多めな展開を目指して頑張りますので、よろしくお願いします！ (2018年1月9日 21時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Sandoriyon0000 | 作成日時：2017年12月13日 23時
