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君のいる朝 24 ページ28

「なんじゃ、儂では不満か」

はは、と笑うのは、綺麗な女の人。サーヴァントはみな綺麗だ。だからつい、固まってしまう。メイヴの前でもそうだった。なにか言い返したらどうだと言われた時に素直に告げたら、もっと近い距離で触れられるようになってしまって、困ってしまう。

そ、っと地面に降ろされた。見上げるほど背が高くて、凛としている。Aにはない、ひととなりの強さをあらわすようで、憧れに近い気持ちがわいてきた。

「そんなに見つめられると穴があきそうだな」
「あ、っ……ごめんなさい」

気がつくと顔をじっと見つめてしまっていた。相手の顔をじっと見るのは、マナーとしていけないことだと教えられたばかりなのに。視力のなかった時の癖で、無意識に相手の顔をいつまでも見てしまう。ひどい時は触っていることもある。
頭をさげると、よいよいと鷹揚に許してくれた。

「なんだ、見惚れたか」
「うん。お姉さん、すごく綺麗」
「……そ、うか。お姉さん、な……とんだ人たらしだ、将来がおそろしい」
「??」

女の人はぶつぶつと呟いた。気に障ることを言ってしまったのだろうか。謝ろうとする前に、しゃがんで目線をあわせてくれた。

「スカサハという。クー・フーリンは私の弟子だ」
「クーの、先生?」
「おうとも。まぁ最も、オルタの方は御せん。お主も見たんだろう? あの狂化こそが奴の本領よ」

血だらけの姿が過ぎる。

「ああなったら最後、すべて屠るまで奴はとまらぬ。だがふざけているのは、そこにはなんの感情もないときた。獣の王、それがアレだ」
「ちがう、ちがうよ」

Aはスカサハの手を握って訴える。

「泣いてる、みたいだった。クーも、わかってた。自分が何をしようとしてるか、わかってても、止めれないって、苦しんでたの」

Aは確かに、耳にしたのだ。狂王の、もういいという、諦めにも似た慟哭。

「……お主にはそう聞こえたかもしれぬが、あの場にいる誰もがアレをおそれたさ。キャスターの方は殺すことも視野に入れておったようだ」
「ころす?!」
「マスターに危害が加わるのなら、私もそうする」
「ひどいわ、そんなのひどい!!」

猛烈な、悔しさがこみ上げる。

「だって、それじゃあ、誰があの人を信じてあげるの? 先生にも、同じ名前の人にも、誰にも信じてもらえないあの人の気持ちはどうなるの?!」

わん、と、叫びは回廊によく響く。
苛烈なまでの純粋な瞳を、スカサハは眩しく思った。

(……随分と、まぁ)

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Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 碧依さん» わわわわ感想ありがとうございます!!2度もいただいてもったいない……!は、発狂!そこまで萌えていただけて嬉しいです!いつも応援ありがとうございます、3部頑張ります! (2018年1月11日 0時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - ありささん» はじめまして!感想ありがとうございます!1章から読んでいただけて嬉しいです!3章楽しみにしていただけている気持ちに答えられるよう頑張ります、応援ありがとうございます……! (2018年1月10日 16時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
碧依(プロフ) - 第2部完結おめでとうございます!最後の方は超絶キュンキュンして悶えながら読んでました← もう心の中で発狂してました← 第3部も続くとのことで、とても嬉しいです! 心待ちにしています! これからも頑張って下さい! (2018年1月10日 14時) (レス) id: e83e0a514a (このIDを非表示/違反報告)
ありさ(プロフ) - はじめまして、一章から楽しく読ませていただいております!三章が凄く楽しみです!これからも頑張ってください!! (2018年1月10日 13時) (レス) id: 5124bcd214 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - いよりさん» はじめまして!感想ありがとうございます!1章かは2章まで読んでいただけて嬉しいですありがとうございます……!3章もハラハラドキドキ、きゅんきゅん多めな展開を目指して頑張りますので、よろしくお願いします! (2018年1月9日 21時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Sandoriyon0000 | 作成日時:2017年12月13日 23時

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