君のいる朝 22 ページ26
Aはまどろみから目覚めてすぐ、医務室へ向かう。ここ3日、Aの朝は医務室へ向かうことから始まっていた。素足だと寒い。スリッパとブランケットを装備し、ベッドをそっと抜け出した。
大半の職員が、まだ夢の中だ。デジタル時計は午前5時を指していた。7時の交代に備える彼らの眠りを妨げてはいけない。
仮眠室は管制塔に直接繋がっている。戸を開ければ、今日もスタッフ達は忙しなくデータの解析や電力のチェックをしている。その中にはドクターの姿もあった。
「ドクター」
「あ、Aちゃん。おはよう、よく眠れたかい?」
手袋をした手は今日も珈琲の入ったマグカップを持っている。香ばしいこの飲物の匂いが、ドクターの匂いだった。
「はい。ドクターは?」
「あーうん、ばっちり……」
どこか遠い目のドクターだけれど、今日は目の下に隈がない。疲れた雰囲気もないから、ちゃんと睡眠は取れたのだろう。気持ちが休まらなかったのかもしれない。
「ああ、クー・フーリンのオルタだけれど、魔力も安定してきている。じき目を覚ますと思う」
それは待ち望んだ報せだった。 Aの顔もほころぶ。
「ただ、やっぱり面会は危険だ。狂化したあとのバーサーカーの状態が果たしてどこまで持ち直せてるのか、こちらとしても判断がつけられない」
「……暴れちゃうかも、しれない?」
「その可能性も否定できないんだ。だからもう少しだけ、待てるかい?」
中腰になって目線をあわせてくれるドクターの言葉に、嘘はないのだろう。Aは頷く。いくらでも待てる。彼が目を覚ましてくれるなら、それだけで。
「マスターに、お礼、言わなきゃ」
「お礼?」
「治してくれたから」
あのあと、マスターは魔力不足で寝込んでいる。風邪のような症状で、レイシフトも休んでいた。
「じゃあ、朝ごはん作ってあげるといいよ。それだけで大喜びだろうから」
「はい!」
Aは頭を下げて、ぱたぱたと医務室へ向かった。
「いい子だなぁ、素直で」
ロマニはしみじみと呟いた。揺れる後ろ髪と迷いのない足取りが、少女の一途さをあらわしている。
マシュといい、マスターといい、Aといい、みな心根が真っ直ぐだ。力になってあげたい、そう思わずにはいられない、いい子たちだ。
(だから誰も悲しませたくないんだけど)
ロマニは机を振り返り、そこに置かれた「意見書」の内容に、再び途方に暮れた。
164人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 碧依さん» わわわわ感想ありがとうございます!!2度もいただいてもったいない……!は、発狂!そこまで萌えていただけて嬉しいです!いつも応援ありがとうございます、3部頑張ります! (2018年1月11日 0時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - ありささん» はじめまして!感想ありがとうございます!1章から読んでいただけて嬉しいです!3章楽しみにしていただけている気持ちに答えられるよう頑張ります、応援ありがとうございます……! (2018年1月10日 16時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
碧依(プロフ) - 第2部完結おめでとうございます!最後の方は超絶キュンキュンして悶えながら読んでました← もう心の中で発狂してました← 第3部も続くとのことで、とても嬉しいです! 心待ちにしています! これからも頑張って下さい! (2018年1月10日 14時) (レス) id: e83e0a514a (このIDを非表示/違反報告)
ありさ(プロフ) - はじめまして、一章から楽しく読ませていただいております!三章が凄く楽しみです!これからも頑張ってください!! (2018年1月10日 13時) (レス) id: 5124bcd214 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - いよりさん» はじめまして!感想ありがとうございます!1章かは2章まで読んでいただけて嬉しいですありがとうございます……!3章もハラハラドキドキ、きゅんきゅん多めな展開を目指して頑張りますので、よろしくお願いします! (2018年1月9日 21時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Sandoriyon0000 | 作成日時:2017年12月13日 23時