君のいる朝 20 ページ24
ドスの効いた声。これで生前に天使などと呼ばれていたなんて誰が信じるだろう。
「ロマニ・アーキマン。あなたには徹底的な治療を施します」
「ひぎゃああああああ!!」
問答無用で担がれてロマニは悲鳴をあげた。二杯目のカフェインを優雅に摂取するダ・ヴィンチは「あーあー」と笑う。
「ま、今のあんただとぶっ倒れるのが関の山さ。きっちり休んでおいで。それも仕事だよ」
「それにしたってひとりで」
言い切る前に戸が閉まる。女性職員は生暖かい目で見送るも、男性職員は「いいなぁ」と羨望の声を上げた。
(むりむり、むり!!)
仮眠室の固いベッドに押し倒され、ロマニはパニックに陥った。いくらサーヴァントとはいえ女性とベッドに入っている。女性と縁のないロマニのキャパはとっくに限界を突っ切っていた。
しかも婦長は共に眠るつもりらしい。さっさと上着を脱いでしまう。
「あなたが眠るまで見張ります」
「わかった寝る!! ねるから!!」
(ちかいちかいちかい!!!!)
豊満で深い谷間を刻む柔らかなそれが眼前にある。健全な男性であれば赤面かまじまじと眺めるだろうが、ロマニは涙目だ。
もう嫌だ無理帰りたい。喉から噴出寸前の喚きは、視界を闇に包まれて引っ込んだ。
瞼を覆うのは、あたたかい掌。
「もう寝なさい」
思いがけず優しい声が降ってくる。
「明日のために休むのです」
明日の、ため。ロマニは震える息を吐いた。
明日のことなんて誰にもわからない。
あのときああしておけば、こうしておけば。そんな後悔だけはしたくなくて、ロマニは自分を奮い立たせてきた。今は、立ち止まっていられないのに。
「……眠れないのなら気絶させましょうか」
ロマニは慌てて目を閉じ、ぐー! ぐー!と大きな声を上げた。寝ていますよーとアピールしたが、婦長のお気に召さなかったようだ。かなりきつく唇を摘まれ、痛みに呻く。
「仏の顔もなんとやら、でしたか。ドクター」
「は、はひ」
「寝ろ」
「イェッサー……」
ロマニはきつく目を閉じた。これだけで凝り固まった眼球が軋む。ずぐ、と思い出したように頭痛がする。
早く眠らなければ生命の危機だ。羊が1匹、羊が2匹……数えたところで眠気は来ない。身体は確かに疲れているのに、神経はたかぶったまま。
眉間に寄った皺に、指が触れる。婦長の指だ。なんだかいい匂いがする。ふ、と強張りがなくなり、呼吸が楽になってーーーーロマニは気絶するように眠った。
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Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 碧依さん» わわわわ感想ありがとうございます!!2度もいただいてもったいない……!は、発狂!そこまで萌えていただけて嬉しいです!いつも応援ありがとうございます、3部頑張ります! (2018年1月11日 0時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - ありささん» はじめまして!感想ありがとうございます!1章から読んでいただけて嬉しいです!3章楽しみにしていただけている気持ちに答えられるよう頑張ります、応援ありがとうございます……! (2018年1月10日 16時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
碧依(プロフ) - 第2部完結おめでとうございます!最後の方は超絶キュンキュンして悶えながら読んでました← もう心の中で発狂してました← 第3部も続くとのことで、とても嬉しいです! 心待ちにしています! これからも頑張って下さい! (2018年1月10日 14時) (レス) id: e83e0a514a (このIDを非表示/違反報告)
ありさ(プロフ) - はじめまして、一章から楽しく読ませていただいております!三章が凄く楽しみです!これからも頑張ってください!! (2018年1月10日 13時) (レス) id: 5124bcd214 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - いよりさん» はじめまして!感想ありがとうございます!1章かは2章まで読んでいただけて嬉しいですありがとうございます……!3章もハラハラドキドキ、きゅんきゅん多めな展開を目指して頑張りますので、よろしくお願いします! (2018年1月9日 21時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Sandoriyon0000 | 作成日時:2017年12月13日 23時