君のいる朝 10 ページ14
きらきらと目を輝かせる姿は年相応で、マスターも嬉しくなってくる。予想外のご馳走に、場の空気が盛り上がった。
「よし、そうと決まればさくっとドラゴンでも狩ってくるか。あの肉、鳥っぽいからあうだろ、チーズと」
「いいね! お願いランサー!」
「おうよ!」
ランサーは燻っていたこともあってか、獲物を求めて飛び出す。跳ねた後ろ髪を見送り、マスターはリュックの中からテントや寝袋、簡単な調理器具などなどの「野宿セット」を用意する。その時、目の端に入ったのは尖った武装を纏う足の甲ーーーーオルタだ。
「オルタも狩り行く?」
「いや……見張ってる」
長い尾を揺らし、瞬きのうちにオルタは跳躍した。天辺に近い木の枝に足をかける姿は見上げてもはるか遠い。暗くなればシルエットしかわからなくなりそうだ。
「珍しいね、オルタが見張りって」
「ま、今日は満足なんだろう」
焚き火の用意を終えたキャスターがふぅ、と組んだ木の枝に息を吹きかける。ばち、と空気が爆ぜるちいさな音がして、そこから火がゆっくりと現れた。
「おおお……」
「いやいや何回も見てるだろ」
「飽きないよ、師匠の魔法だもん」
「魔法じゃなくて、ルーンな」
ったく、と苦笑しつつ、キャスターは火を囲む。なんとなくマスターと距離が近い気がしたが、まぁいいかと腰を落ち着けた。
ぱち、ぱちと火は徐々に大きくなっていく。今回のレイシフトの季節は秋だ。夜の寒さは厳しいだろう。もう少し火を大きくしてもーーーーそう考えていた矢先、とんと肩に軽い衝撃。見ればマスターがもたれていた。
「おい、マスター」
「いいじゃん、寒いし」
「お前なぁ……」
えへへ、と笑うあたり悪びれる様子はない。甘えられている。師としては離すべきだったが、好きなようにさせた。何を言っても押し通されることはわかっていたし、今夜はたしかに冷える。
「ねぇ師匠。師匠はさ、もし聖杯戦争で召喚されてたら聖杯に何をお願いしてた?」
「なんだ藪から棒に」
「……ずっと気になってたよ」
マスターは息を吐いた。白く濁って、溶ける。森の夜の訪れは早い。キャスターもまた空を見上げる。
「……ま、案外なんも思い浮かばねぇかもな、願いなんて」
納得のいく返答ではなかったようだ。マスターは不満そうに唇を尖らせる。
「えぇー? うっそだぁ、億万長者とかモテモテとか超級の美人とか! あ、師匠は美人か」
「男に美人はやめろ?」
「……でもそっか。願い、ないんだね」
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Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 碧依さん» わわわわ感想ありがとうございます!!2度もいただいてもったいない……!は、発狂!そこまで萌えていただけて嬉しいです!いつも応援ありがとうございます、3部頑張ります! (2018年1月11日 0時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - ありささん» はじめまして!感想ありがとうございます!1章から読んでいただけて嬉しいです!3章楽しみにしていただけている気持ちに答えられるよう頑張ります、応援ありがとうございます……! (2018年1月10日 16時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
碧依(プロフ) - 第2部完結おめでとうございます!最後の方は超絶キュンキュンして悶えながら読んでました← もう心の中で発狂してました← 第3部も続くとのことで、とても嬉しいです! 心待ちにしています! これからも頑張って下さい! (2018年1月10日 14時) (レス) id: e83e0a514a (このIDを非表示/違反報告)
ありさ(プロフ) - はじめまして、一章から楽しく読ませていただいております!三章が凄く楽しみです!これからも頑張ってください!! (2018年1月10日 13時) (レス) id: 5124bcd214 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - いよりさん» はじめまして!感想ありがとうございます!1章かは2章まで読んでいただけて嬉しいですありがとうございます……!3章もハラハラドキドキ、きゅんきゅん多めな展開を目指して頑張りますので、よろしくお願いします! (2018年1月9日 21時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Sandoriyon0000 | 作成日時:2017年12月13日 23時