299歩目 ページ11
「あ!!?あれ!?サイフがないぞ!!?」
船が岸を離れ始めた時、誰かがそう言った。その言葉に島の人達やヨサクとジョニーが、自分たちのポケットやカバンを探り始める。
「あれ…!!?」
「ない…!!」
島の人達が慌てる中、不敵に笑ってナミがTシャツの裾を捲りあげた。と同時に、ドサドサと服の下からたくさんの財布が滑り落ちる。
「みんな元気でね♡」
ナミのいたずらな笑顔に、全員が一瞬真顔になった。
「や…」
「「やりやがった、あのガキャーッ!!!!」」
思わず、私は噴き出していた。
「あっはっはっはっは!!やるじゃないか、あんた!!」
「おい、変わってねェぞコイツ」
「また、いつ裏切ることか」
「ナミさん、グーッ!!」
「だっはっはっは!!」
背後から、島の人たちの怒鳴り声が追いかけてくる。
「この泥棒ネコがァーッ!!!」
「戻って来ォい!!!」
「サイフ返せェ!!!」
ワァワァと騒ぐ島の人たちに、ナミはふっと嬉しそうな笑顔を見せた。この8年、きっとこの島はこんなに明るく、元気だった日はなかったのだろう。それが、今、ちゃんと元に戻ったことが、ナミにとっては嬉しいらしい。
「この悪ガキィーッ!!!」
そう怒鳴る声は気がつけば、優しい声に変わっていた。
「いつでも帰ってこい、コラァ!!!」
「元気でやれよ!!!」
「お前ら感謝してるぞォ!!!」
手を振るのをやめ、私は甲板へ向かって歩き出した。その私の頬を優しく潮風が撫でる。
「小僧!!」
ナミの父親代わりだった人の声がした。名前は、確か…ゲン、といったはずだ。
「約束を忘れるな!!!」
その言葉に、何も言わずルフィはグッと親指を立てた。
「じゃあね、みんな!!!!行ってくる!!!!」
ナミの声をまた優しい風が、島へと運んでいく。
「…手を貸してくれて、ありがとう」
そう囁くと、潮風は私の周りを軽く回って、また何事もなかったかのようにそよぎ始めた。
─ナミを頼んだよ
どこからか、若い女の人の声がした。明るく、芯の強い、そして、なにより優しそうな声だった。
(…たぶん、あなたがベルメールさんなのね)
出会ったことはないけれど、きっとこの声のような人だったんだろう。
すっかり遠くなった島に向かって、私は一度だけ振り返った。そして、目いっぱいの笑顔で、手を振った。
「ナミのこと、頼まれた!」
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りと(プロフ) - 甘党さん» あ、ありがとうございます〜!トンカチって書いてましたか…!すぐ修正しときます〜!! (2018年11月26日 18時) (レス) id: 193ad08974 (このIDを非表示/違反報告)
甘党 - りとさん!読ませていただいてますが、一つ質問?です!322歩目の話でルフィの事をトンカチと言っていますが、正しくはカナヅチではないでしょうか?すごい細かくて申し訳ないんですけど、気づいてしまったのでとりあえずご報告を…(*'ω'*) (2018年11月26日 18時) (レス) id: de091372b0 (このIDを非表示/違反報告)
ミカン(=・ω・=)(プロフ) - りとさん» そうでしたか!お返事ありがとうございますm(_ _)m (2016年8月18日 18時) (レス) id: 86f8ae39c8 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - ミカン(=・ω・=)さん» ミカンさん、コメントありがとうございます。理由としては2つあって、1つは作者が面倒に思ったから。もう1つはない方が文字数が稼げるからです。別段意味はないですよ(*^o^*) (2016年8月18日 18時) (レス) id: 78fb09e763 (このIDを非表示/違反報告)
ミカン(=・ω・=)(プロフ) - 質問いいですか?なぜ途中からセリフのとこに名前を付けなくなったんですか?変なこと聞いてごめんなさい!これからも頑張ってください^^ (2016年8月18日 18時) (レス) id: 86f8ae39c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りと | 作成日時:2016年4月26日 14時