50 小さな望み ページ50
二回戦も間近に迫ったが、依然としてチームの結束はバラバラのまま。
放課後の練習が終わり、誰もいなくなったグラウンド横を突っ切って歩こうとしたのだが。
ベンチの一番奥にサッカーボールを見つけた。誰かが置いて、そのまま忘れて帰ったのだろう。
明日先輩が見つけると怒りそうだし、こっそり戻しておこう。そう思って手に取った。
──この前の河川敷といい今日といい、はぐれボールを見つけることが多いな。
この前の、河川敷。剣城に抱きとめられた感覚がフラッシュバックして、一人で赤面する。
柄は悪いけど、根っからの悪人というわけでもなさそうだった。そもそもどうしてフィフスセクターに属しているのだろう。
もっと強くなりたいから？ 純粋に雷門に恨みがあるから？ それとももっと別の──
まあ、いいや。考えてもわからないものはわからない。
グラウンドに目を向ける。カバンを置いてボールを持って、ゆっくりとフィールドに入った。
いつもみんなが練習している場所。いつもベンチから眺めるだけだったけど、こんな景色をしていたんだ。
──ちょっとぐらい、許されるだろう。そう思ってリフティングを始めた。
次は斜めにドリブルしてみる。あの時の天馬の練習みたいに。
ちょっと小刻みに、ステップを踏んでみる。そのままボールを浮かせ、シュート。入った。
もうワンプレーだけして帰ろう。そう思った時。
「A？」
後ろから呼びかけられ、どきりとして振り向く──神童だった。
見られた。別にサッカーができることを隠す必要はないんだし、既に天馬を含めた何人かにはバレてるんだけど……反射的にそう思った。
「驚いたな……今のプレー、一朝一夕じゃ身につかないだろう」
けれどそう言われて──俯きかけていた顔を上げる。
「お、お世辞？」
「まさか。俺はお世辞はあんまり言わないんだ」
じんわりと胸に暖かいものが広がる。
私のプレーは雷門のみんなに見せても、恥ずかしくないレベルにまで上がったのか。
友達もいなくて、ずっと一人で……誰もいない場所を探しては練習していたけれど。その努力は無駄じゃなかったのか。
「あの、神童……ワガママかもしんないんだけど」
「ん？」
なら、許されるだろうか。ささやかな願い。叶わなかったと思っていた願い。
「ワンプレーだけでいいから一緒に……その、サッカーしてほしい」
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キメラ(プロフ) - 充滞さん» 充滞さん、コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても光栄です、励みになります！ マイペース更新ですが見守っていただけると嬉しいです。 (2022年5月24日 21時) (
レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - キャラがとても公式よりで、とてもドキドキしました！主人公が抱く神童への劣等感、羨望を感じます。木から落ちる主人公を剣城が受け止めるシーンにときめきました。この小説を作ってくださりありがとうございます (2022年5月23日 11時) (レス) @page49 id: 7d360b94a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2022年2月3日 23時
