41 救済の手 ページ41
「相変わらず年上に対する態度がなってねえな」
ドスの効いた低い声。胸倉を掴む、血管の浮いた手。
振りほどけない。四年前とは、違う。体格差も力も。今更になって血の気が引いていくのを感じていた。
「あん時はよくも恥かかせてくれたな──」
もがく。勝てない。逃げられない。
振り上げられる拳に、ぎゅっと目を瞑ったその時。
「もしもし、手島高校の方ですか」
どこか間延びした声が聞こえてきた。
なんとか首を巡らせると、そこにいたのは携帯を耳に当てた──南沢さん。
「お宅の高校の男子生徒が、女子中学生をいじめているんです」
動じずに、飄々と。いつものクールな目で、じっとこちらを見つめている。
「男子生徒の特徴ですか。身長は175センチくらいの……」
そこでふっと閉塞感がなくなる。目の前に視線を戻すと、今岡が舌打ちをして歩き出すところだった。
「よかったな、彼氏に助けて貰えて」
そんな捨て台詞を残して去っていく。
その姿が完全に見えなくなったところで、ゆっくりと南沢さんに向き直る。
「ありがとう、ございます」
「なんだ、カツアゲか？」
「……まあ、はい」
昔殴った相手に仕返しをされかけた──なんて、誰かに言うようなことでもない。そう思い、曖昧に頷く。元々は自分でまいた種なのだし。
制服についたシワを直しながら、疑問を問いかける。
「なんであいつの通う高校、わかったんですか」
「制服の紀章見りゃ一発だ。学校に電話するフリでもすりゃビビるかと思ったが、まさか本当に逃げるとはな」
逃げなかったらどうするつもりだったのだろう──とは言わないでおいた。こちらは助けてもらった身だ。
南沢さんは携帯をポケットにしまい、前髪をかきあげながらこちらに歩いてくる。
「途中まで送ってやる」
「え？」
全く予想していなかった言葉に、声が裏返った。
「同じ部活のよしみだ。それともまたあんなのに絡まれたいのか？」
「あ、えっと、いえ……ありがとうございます」
再度のお礼を言って、二人で歩き出す。
当然、無言。
助けて貰って感謝しているのだが……どうしてわざわざ。見て見ぬふりだってできたはずだし、むしろ南沢さんはそうするイメージがある。
「うざいよな、あいつら」
道沿いに並んだ街灯が一斉に着くと同時に、南沢さんはそう零す。
人工的な光に照らされたその顔は、あいかわらず無表情で。
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キメラ(プロフ) - 充滞さん» 充滞さん、コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても光栄です、励みになります！ マイペース更新ですが見守っていただけると嬉しいです。 (2022年5月24日 21時) (
レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - キャラがとても公式よりで、とてもドキドキしました！主人公が抱く神童への劣等感、羨望を感じます。木から落ちる主人公を剣城が受け止めるシーンにときめきました。この小説を作ってくださりありがとうございます (2022年5月23日 11時) (レス) @page49 id: 7d360b94a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2022年2月3日 23時
