5 差し込む光 ページ5
黒い衝撃波。そう形容するしかない、強力な技だった。
ベンチにいる私たちまでにも余波が伝わってくる。端から見ているだけなのに鳥肌が立つ。
「松風!」
気付けば叫んでいた。避けろ──そう言いたくて。
しかし松風は逃げなかった。確固たる意志を瞳に宿し、真っ向から対峙する。
「サッカーやるんだ……やると決めたら絶対、やるんだーーっ!!」
瞬間。
松風の背中から出る、黒い影を見た。
そうして──真正面からのヘディングで、なんとボールが弾かれていた。
ベンチの面々が身を乗り出して、目の前の光景を凝視している。信じられないものを見るように。実際信じられなかった。
そうして転がったボールの上に足が乗せられる。松風の足が。
「と……取った!」
ポカンとしていた本人は自分のしたことに気がつくと、両手でガッツポーズを作る。
「取りました……天馬くん、取りましたよ! ボールを取ったってことは、天馬くんの勝ちね!」
音無先生が嬉々として言った。
それにしても今のは……未完成の必殺技? いや、違う。もっと大きい力のような気がする。
兎にも角にも、廃部は免れたのだ。安堵して肩の力を抜く。そうして初めて、自分の身体が緊張でガチガチになっていたことに気がついた。
「これでサッカーができる……!」
「サッカーサッカー言うんじゃねえ! うぜえんだよ!!」
しかし。刺客は松風の言葉に対し苛立ったようにそう言って、あろうことかシュート体勢に入った。
「ちょっと! 約束が違う──」
音無先生の制止も虚しく、ボールはまた凄まじい勢いを持って松風の顔面へ吸い込まれていく。
しかし。
突如飛んできた別のボールが当たり、軌道がずらされた。
刺客のシュートは、松風の頭スレスレを飛んでいく。
突然の第三者の登場に、その場の全員がボールの飛んできた方向に視線を向けた。
そこにいたのは──
「お前たち! サッカー部の神聖なグラウンドで何を騒いでいる!」
一人の男子生徒だった。
ファーストチームの黄色いユニフォーム、左腕には赤いキャプテンマーク。
「神童……」
私の口から、ぽつりとその名が漏れた。
そうして男子生徒の──神童の背後から、続々と同じユニフォームを着た面々が登場してくる。
「俺は雷門中キャプテン、神童拓人。そして、ここにいるのが……雷門イレブンだ!」
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キメラ(プロフ) - 充滞さん» 充滞さん、コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても光栄です、励みになります! マイペース更新ですが見守っていただけると嬉しいです。 (2022年5月24日 21時) (レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - キャラがとても公式よりで、とてもドキドキしました!主人公が抱く神童への劣等感、羨望を感じます。木から落ちる主人公を剣城が受け止めるシーンにときめきました。この小説を作ってくださりありがとうございます (2022年5月23日 11時) (レス) @page49 id: 7d360b94a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:キメラ | 作成日時:2022年2月3日 23時