40 蔑む相手 ページ40
そこからは三国さんを筆頭に、次々とミーティングルームから退場していった。
──ついていけない。みんなの背中がそう物語っていた。
「キャプテン……！ キャプテンは昨日、本気のサッカーをするって言ったじゃないですか！」
松風に詰め寄られるも、神童は顔を上げなかった。
「勝ちたい気持ちは変わらない。でも俺達の思いだけで、先輩や仲間の将来を左右していいのか……？」
内申。未来。今年で卒業していく先輩たち。
私たちにとっては正義だと信じてることが、他の人から見たらただの迷惑な行為でしかない。そういうことだった。
フィフスに逆らう人たちと従う人たちで、部内は二分されていた。
＊
陽の落ちかけた河川敷の道を、一人歩く。
神童はどうするつもりなのだろうか。
結局あの後の練習も、まともに来ているのは松風と西園くらい。
だけど神童の『無様なサッカーはやりたくない』──その言葉に嘘の色は含まれていなかったように聞こえた。
勝ちたい思い、仲間の将来。どちらが大切とかそんなのではないからこそ、神童は悩んでいるのだ。
「あ？ AAじゃん」
鉄橋下に差し掛かった時、不意に背後からフルネームで呼びかけられる。
振り向くと、そこにいたのは見知らぬ青年。脱色した髪に着崩した制服、耳に光るピアス。体格的に高校生くらいだろうか。
「あの、どちら様で──」
言いかけて──頭を殴られたような衝撃が全身を貫いた。
真上を電車が走る。振動と轟音が、私の脳みそを掻き乱していく。
「『どちら様で』？ あーあ、やっぱ加害者ってのは自分のやったことを忘れちまうもんなんだなぁ」
小馬鹿にするような意地汚い笑み、人を見下すかのように前に出される顎。
間違いない。こいつは──稲妻KFCのメンバーだった。
今岡健太郎。私が四年前、その顔面をぶん殴った相手だった。
「つかその制服、雷門のじゃね？ まさかサッカー部入ってるとか言うんじゃねえだろうな。あ、でもお前女だから選手は無理か」
『女だから』の部分を余計に強調され、怒りが湧き上がりかけるが抑える。
──頭に血が上って手が出た、昔の二の舞にはならない。
「だったらなんだっていうの。あんたには関係ない」
それだけ言って踵を返しかけた瞬間──視界が急激に回った。
背中に硬い感触、目の前には今岡の顔。胸ぐらを掴まれて壁に押し付けられたのだと気付くのに時間はかからなかった。
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キメラ(プロフ) - 充滞さん» 充滞さん、コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても光栄です、励みになります！ マイペース更新ですが見守っていただけると嬉しいです。 (2022年5月24日 21時) (
レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - キャラがとても公式よりで、とてもドキドキしました！主人公が抱く神童への劣等感、羨望を感じます。木から落ちる主人公を剣城が受け止めるシーンにときめきました。この小説を作ってくださりありがとうございます (2022年5月23日 11時) (レス) @page49 id: 7d360b94a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2022年2月3日 23時
