4 死の剣 ページ4
驚きで声が出そうになるのを抑え、フィールドの松風に視線を移す。
さっき出会った新入生。サッカーが大好きだと笑いながら言っていた。
サッカー部の存亡が、松風一人にかかっている──？
「嘘でしょ」
「嘘じゃないわ」
静かに会話に割り込んできたのは音無先生だった。
「彼は恐らく、フィフスセクターから送り込まれた人間よ」
フィフスセクター。その単語に、自分の中で辻褄が合った。
サッカー実力主義となった社会を平定するという名目で、二年前に突然台頭しだした組織。
ああ、とうとう雷門にも来たのか──ゆるやかな諦観が胸の中に広がり始める。
戦いは今まさに始まったところらしかった。
が、勝負以前の問題だった。
刺客の技術が圧倒的すぎる。まるで自分の身体の一部であるかのようにボールを操っている。
はっきり言って松風は遊ばれていた。何度も果敢に挑んでいくもかわされ、いなされ、遂には転んでしまう。
動きから見て、サッカー初心者。いや、たとえ初心者じゃなかったとしても、あの刺客のプレーに食らいついていくのは難しいだろう。
その時──刺客が力任せにボールを前へ蹴った。
ボールは凄まじい勢いで松風の腹にめり込み──その勢いで松風は数メートル後ろへ吹っ飛ばされる。
息を呑んだ。あれはシュートと言ってもいい勢いだ。
しかし松風は立ち上がった。息を切らしながら刺客に突っ込んでいく。
それからは同じことの繰り返しだった。ボールをぶつけられる。転ぶ。また立ち上がる。ぶつけられる……。
凄惨だった。勝負でも何でもなかった。これはもはや一方的な暴力──
いや。
「テクニックはまだまだだけど……あいつの動き。初めの頃よりぶつけられる時のダメージが最小限に動いているような気がする」
一乃たちの会話を聞き、疑問は確信に変わる。
そうだ。肩にしても腹にしても、急所になるところを外してボールを受けているようにも見える。
だが刺客の放つボールのスピードがそれを遥かに上回っているのだ。完全には防ぎきれていない。
十回ほどその攻防が続き──場には静寂が訪れる。
そしてフィールドの雰囲気が変わった。
「あいつ……やる気だ！ 俺たちを一撃で倒したあの技で！」
風が吹き、フィールドの砂を僅かに巻き上げた。
凄まじい緊迫感がフィールドを、ベンチを駆け抜ける。
そして。
「『デスソード』」
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キメラ(プロフ) - 充滞さん» 充滞さん、コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても光栄です、励みになります！ マイペース更新ですが見守っていただけると嬉しいです。 (2022年5月24日 21時) (
レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - キャラがとても公式よりで、とてもドキドキしました！主人公が抱く神童への劣等感、羨望を感じます。木から落ちる主人公を剣城が受け止めるシーンにときめきました。この小説を作ってくださりありがとうございます (2022年5月23日 11時) (レス) @page49 id: 7d360b94a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2022年2月3日 23時
