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一見鬼畜のようだったが、志麻はそうでもなかった。
難民となった民にはきちんと救済措置をとり、隣国の三国と同盟を組んで支援をしてもらった。すんなりと同盟が結べたのは王＿志麻＿自身の三国との個人的な付き合いが実を結んだ結果だろう。
──そうして百年──私はこの国を山から見守ってきた。
民には活気が戻り、近代化が進んだ。王は志麻。あの頃、私を見下ろした若い目をそのままに今も治世を敷いている。
ふふ、と思わず微笑が漏れた。
曇りがちだった空は晴れて、民が耕した青々とした畑を優しく照らす。
「……ああ、やっぱりおったわ」
百年前から全く変わらぬ声。今は後宮に誰を押しやるかでまた争いが起きそうになっている台風の目──志麻。
「…後ろからしか…登場しないの？」
嫌いだ。自分のこんな声なんて。私の声は子供っぽくて、優艶な仕草で宮中の女をひきつけまくる、色気の塊のような志麻とはまるで逆。
振り返れば、志麻は「ふ、」と笑った。少し小高い岩の上に立つ志麻。仙たる私を見下ろすのは、やはりこの男だけだと思った。
「…ほんまは、王権をこんなことに使いたくはなかったんやけど。」
昔、『この国を立て直す』と言った時の目と重なる。
思えば私は、ずっとこの人を見ていた。
志麻は岩から軽やかに飛び降りた。柱から降りたのと同じように。
紫の髪がふわりと揺れた。そして私に近づく。身長の差で、必然的に私を見下ろす形となり、それもあの頃と重なった。
お互いに全く年を取らぬまま、百年前と変わらぬ位置で場面で。場所を移したままに時空ごと移動したような──タイムスリップをしたみたいだった。
「勅命を持って命ずる」
一歩また近付いて一言。そして右腕を突き出した。意味は──俺の右腕となれ。
「仙たるお前を後宮に遣わす
──お前は今日から俺の妻や」
硬い表情から柔らかな表情へ、
硬い言葉は柔らかな話し言葉へ、
そしてその言葉を理解した瞬間──私の目からは涙が溢れた。震える足を動かして志麻に近付く。
志麻に近付けば、私が涙を流したからか、国中が土砂降りになった。
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なのなの-VII(プロフ) - 以前から気になっていたのですが、時間がなく、やっと拝見させていただくことができました。私の少ない語彙力では、気持ちを全て伝えることができないことが悔しいです。なので、一言だけ。とても、素晴らしかったです。 (2019年12月9日 23時) (
レス) id: 3d69e77dfd (このIDを非表示/違反報告)
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