望くんと彼女。

03.席替えとくじ引き ページ3

〆．



望が切ない顔をしていた。



今から席替えをするからだろう。



私の斜め後ろにいた彼は、その位置関係をとても気に入っていた。



黒板を見るふりしながら私をガン見できるとか



横顔も眺められるとか



私の真横や真後ろや私より前の席では出来ないことが、斜め後ろの席だとできるんだって。



言い終わってからあわあわしてた、可愛かった。



「望と席離れたら、私、寂しくて学校来なくなっちゃうかも」



「ぐう」



録音しましたか？



したに決まってるね。



満足して、くじを引く。



「うーんと……あ、窓際か」



なかなかいい席。



自分の持つ番号と黒板に書かれた座席番号を照らし合わせたら、くじは捨てる。



そう、捨てるのだ。



ちらっと、ゴミ回収者さんの方を見てみる。



「嫌やぁあああ！！！！なんでなん！なんでぇええ！！」



見なかったことにする。



「あ、私前の方になっちゃったな」



「離れたねー、私窓際だよ」



「………………ねえねえ」



私だって、別に鬼じゃないからね。



「先生ぇぇ！！嫌や！俺この席嫌やぁ！！あっちがええの！！あっちぃぃいいい！！！！」



「うるさい！決まってんから従え！」



「嫌やぁぁああああ！！！！」



泣いてる。



めっちゃ泣いてる。



「望、その席やなの？」



「うう、嫌やぁ、ッ」



「ざーんねん。私、望の斜め前なのに」



「……………えっ？！」



望は目を丸くして、私の持つ番号の紙を凝視した。



「ほ、ほんまや。あれ？でも…」



「その席嫌なんだぁ。悲しいな」



「い、嫌ちゃう！神席！！この席愛してる！せんせー！俺ここがええ！！」



「……………授業始めんぞー」



嬉しそうな望。



さっきの、席の話をしていた子たちと目を合わせて、笑いあった。



望に優しい学級だ。



〆．

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