【◇】銀木犀 6. (ページ9)

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253話ページ9

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もしも好きな人に好きな人が出来たら

素直に頑張れと応援するのが1番いい選択なのかもしれない

物語の中にいる主人公を好きになってしまった

振られる側の存在はいつだってそうしてきた

きっとそれが運命だったのだろう

振られる側のはずなのに人は不思議なことに

そちら側の人間の方が何倍もかっこよく魅力的に思うのだ

しかしそれは空想の中の話で

実際現実で誰かに恋した人間が簡単に諦められるかと言えばそうでもなくて

鳴｢(別に絶対好きになってもらえるだなんて思ってないけど)｣

鳴｢(でも、それはそれですげーショック)｣

手が触れた時、額が触れた時

もしかしたらという淡い期待が

現実になってくれればいいのにと強く願ってしまった

好きな人の幸せが自分にとっての幸せ

そんなことを思える人は余程性格がいいのだろう

そしてとんでもなくかっこいい人なのだろう

残念ながらそんなことを思えるほどの余裕は一切ない

鳴｢(応援するなんて言えたらすごいかっこいいんだろうな)｣

応援するよなんて言えるほど大人じゃなければ

かっこいいやつでもない

ただただ自分の気持ちに馬鹿正直で

それ以外のことなんて考えたくなくて

鳴｢それは……応援するよってそこはかっこよく言いたいけど｣

好きな人がいる、もしもそれが本当の話になったら

言葉では言い表せない気持ちになるだろう

それでもきっと諦めるという決断には至らない

鳴｢多分俺は……そこまでかっこよくなれない｣

もうどうしようもないくらい好きだった

まだまだ知らないことの方が圧倒的に多いけれど

知れば知るほど好きになっていくのだろう

今はまだ言えないけれど

生まれて初めて家族以外の誰かを好きになった

この気持ちはそう簡単に揺らがない

鳴｢Aちゃんならどうするの？｣

そしてふと今、自分はどんな顔をしているのだろうと考えた

後ろにいたAの目を真っ直ぐ見つめれば

どんな顔をしているかなんてすぐにわかるのに

どうしてか真っ直ぐ見ることが出来なかった

自分がどんな顔をしてるかなんて知りたくなかったし

Aがどんな顔をしているのかもなるべく知りたくなかった

もしもでも何でも、そんなことは聞きたくなくて