【◇】銀木犀 6. (ページ21)

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265話ページ21

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昨日、もしかしたらAを傷つけるようなことを

無意識に言ってしまっていたんじゃないか

そう思った瞬間

うだるような暑さなのにどういうわけか体が冷えきった

あの時Aはどうしてあんなことを聞いたのか

Aと別れてから寝るまでずっと考えたが

結局それといった答えは分からないままで

藍里｢私のいない所で好き勝手やりやがって｣

藍里｢やっぱアンタなんかにAは渡せないわ｣

鳴の顔を見て色々察したのか

机の上にカバンを投げると椅子に座り

わざわざ後ろを向いて毒を吐いてくる藍里

全てがA優先精神でいる藍里からしてみれば

こんなに分かりやすい態度でいるAの気持ちひとつすら

察することが出来ないなんてと呆れるしかないのだろう

しかし鈍いのはお互い様

Aの場合鳴とは少し違った意味で鈍感で

なかなか相手の好意に気づけないのは

自分なんて、という自信のなさから来ているようだった

藍里｢ただの風邪だっつーの｣

藍里｢大体自分のせいで休んだって、なわけないでしょ｣

変な意味で心臓がバクバクとしている中

休んだ理由は風邪だと藍里は言い出した

昨日の様子からして何か傷つけることを言ったんじゃないか

そう思っていたのは大きな間違いで

ただ単に体調を崩して休んだだけの話

あんなことを聞いたのも体調が悪かったからなのか

それとも全く違う理由なのか

風邪だと知ってほっとする反面、心配な気持ちもあったり

今日は隣に誰もいないのかと思うとなんとも言えない気持ちになった

鳴｢なんだ、風邪なんだ｣

藍里｢明日か明後日には学校に行けるってよ｣

鳴｢…………なっが｣

藍里｢仕方ないでしょ｣

そこにいるのが当たり前、そんな人が初めていない日

心にぽっかりと穴があいているようで

何をするにもやる気が出ない

鳴｢Aちゃんは友達以外ありえないんだってさ｣

藍里｢は？アンタ本当にそう思ってるわけ？｣

鳴｢え、｣

藍里｢そん時のAの顔、いつもと違ってたならそれは絶対に本音じゃないこれ覚えとけよ｣

友達以外ありえないという言葉が

これでもかと言うくらい突き刺さる

変わることを恐れていたくせにいざこうなれば

嫌だと思えてしまう

鳴｢そんなのわかるわけないじゃん…｣