10人目は頑張り屋さん

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猪狩side


〜♪



キャーーーー！！！！！



最後のポーズを決めて
黄色い歓声を浴びている時も
気になるのはAちゃんの様子。



裏に戻ってすぐ、強張った肩の力を抜き
ホッと息を吐いたAちゃん。




「いや...危なかったぁ...」




瑞稀「どういうこと？
クリック入らないなんて聞いてないよ！？」


珍しく声を荒げる瑞稀くんに



新人「なんかクリック音が入らなかったんすよ。
いや〜すみませんね笑」


と舐めた態度で謝る新人スタッフ。





そう、まさかのクリック音が入らなかったのだ。



クリック音が入らないということは
次曲のスタートが曖昧だということ。



俺らは1度リハをしていることで
ある程度、分かっていたからまだ良い。



でもAちゃんは違う。




本番開始15分前に会場入りして
その時にメドレーになったことを知り
リハも音響確認も出来ずにいきなり本番になった。


そしてまさかの本番で
頼りにしていたクリック音が入らなかった。





橋本「いや、なんかって言ってますけど
完全にそっちのミスですよね？」




作間「僕らはまだいいですけど
Aちゃんは音響確認も出来てないんですよ？」





新人「リハに出なかったくせに
女だからって庇ってもらえていいっすね笑」




なんて笑いながらAちゃんを馬鹿にする
新人スタッフさん。





HiHiJetsとして活動していく中で
Aちゃんの凄さを知らない奴が
こうやって馬鹿にしてくる姿を何度も何度も見てきた。


そしてその度に、腹が立って仕方がなかった。





「まあまあ、みんな。
無事に披露出来たんだからいいじゃん。ね？」




2曲目、HiHiJetの動き出しはAちゃんから。

クリックが聞こえなかったAちゃんは
咄嗟に体内感覚で動き出した。




その感覚が見事にピッタリだったから
その後のパフォーマンスが乱れることなく
無事に終わった。



でもそれはAちゃんの体内感覚が、研ぎ澄まされていたことと、たまたま運が良かったことのおかげ。




優斗「でも！」




新人「いや、しつこくね？
この女がいいって言ってんだから、もういいだろ！」




『...やっぱ、許せねー
あの...クリックが上手く入らなかったことは
次、気をつけてくれればいいですよ。

でも、あんたのことを必死に庇ってくれているAちゃんを、馬鹿にするのは違くないっすか！？』






新人「うるせーな！
お前ら全員、俺より歳下のくせに偉そうに！」





『は？』

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