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★8 ページ9

朝の身支度を終えた雄一さんは
白い鞄を持ってどこかへ出かけるようだった





「じゃあ僕ちょっと出かけるけど、好きにしてていいからね」

『あのっ…』

「ん?」

『どちらへ…』

「あぁ、言ってなかったっけ
実は僕、朗読教室開いてるんだ」




朗読教室って…

『え、先生なんですか!?』

「うん まだまだだけどね
あ、一緒に来る?」

『いや、そんな…』

「いいじゃん おいでよ」





ぱしっと腕を掴まれる
決して力が強いわけではないけど、
振りほどくことも否定することも出来ずに頷いた



「よし」






そして、その手はするすると
あたしの手のひらに降りて、
優しく繋がれた



まるでどこにも行かせないと言っているように









雄一さんの家を出てからも
あたしの右手は繋がれたままで
その光景に考えが過る





これ、周りから見たら
つき合ってるように見えてんのかな…


そんなことを思い始めると、この距離がくすぐったい









というか、あたしは仕事まで無断で休んで何してるんだろう

もともと、彼氏にフラれて気分転換にコンビニ来て
雄一さんとぶつかって…





運命……なんて
言ったら引くよね





もしも彼氏にフラれてなかったら
きっとここへ来てなかったし
もう少しあたしの考え方が現実的だったら
きっとこんな出会い信じなかっただろうな






小さい時から
運命とか、奇跡とか
占いすら信じたことなかったのに

この出会いは偶然じゃない気がする
何かに惹かれてるんだと思う









「惹かれ合ってると思うんだよね」

『へっ?』

「あれ、さては花南ちゃん話聞いてなかったでしょ」

『ごめんなさい笑』

「親和数だよ」






………親和数?



「2つの数がお互いに
相手の約数の合計のこと
僕が前通ってた朗読教室で数学に詳しい人がいたんだけどね………」

『―――――…!!』





雄一さんの話が全く入って来ない





何故なら、こっちへ向かって歩いてくる人が



「…花南ちゃん?」






元カレだったから

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作者名:にゃんこけし | 作成日時:2017年11月23日 18時

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