第四話 ページ6
*
声を上げてしまった後に、慌てて口を噤むものの時すでに遅し。
図書委員の人に何事かと言うような瞳で見られてしまった。
私とした事が、図書室という場であんな声を上げてしまうなんて…。
はしたない……。
そんな事を心の中でボヤきつつも、隣にいる彼を再度少しだけチラリと見た。
この本は、誰もが知ってる様なメジャーな本ではない。
何方かと言えば、かなりのマイナー本なのだ。
だからこそ、この本を知っている人がいた事に本当に驚いた。
驚いたからこそ、この本について話したい。という感情もじわじわと込み上げてくるというもの。
“話したい！でも声をかけるのは恥ずかしい…！！”
そんな葛藤をしていると、不意に彼が声が耳に伝わり、考えている最中だったのと、まさか先に貸してくれるという予想外の展開に、また驚いた。
普段の彼女からしたら想像も出来ないほどのすっとんきょうな声を上げ、「レディーファーストってやつ？」などという台詞を吐いた彼を、目を点にさせながら見つめる。
今の自分は確実に間抜けな顔をしているだろうと、頭の端に浮かんだが今はそれ所ではなかった。
“レディーファースト”
などと言う対応をされるのはやはりどこかむず痒いし、何より恥ずかしさを感じるらしい。
ふいっと彼から視線を逸らした。
けれど、上記のキーワードに反応していたのも束の間。
隣にいた彼が離れていく気配を察するや否や、慌てた様子で彼の制服の裾を掴んだ。
案の定、驚きの表情でこちらを振り返る彼と視線が交わる。
「あっ、その…。」
視線が合わさった事で、更に恥ずかしさが募った。
「譲ってくれてありがとう。あまり待たせないよう気をつけるわ。」
と、声色や口調は平然を装っているが顔の火照りだけはどうしても隠せない。
お礼を言う事に対してか、自分のしてしまった行動に対してか、それとも他の事に対してか。
何だかよく分からない恥ずかしさを感じると同時に頬に集まる熱を感じる。
そのまま「良ければ本について話さない？」なんて誘えるコミュ力を持ち合わせているはずも無く、ぐっとその言葉を飲み込んで、譲ってもらった本を片手にその場を離れた。
あぁ、もう…。
何なのよ一体……＿＿＿。
これまでこうならないようにと人を避けに避けてきたと言うのに。
自分の行動を恨めしく思う。
そう、情けなく心の中で呟いくのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
