第三十四話 ページ36
*
「全く…。彼奴もクロエ嬢も、世話がやけるのう」
彼が出ていってからすぐの事、ゆっくりと立ち上がりクロエが横になっているソファーに近付いた。
少し屈んでから、彼女の横髪をそっと撫でる。
数十分経って目覚めた彼女は、理事長にからかわれながらも部屋まで送ってもらい、明日の準備を終えて眠りについた。
明くる次の日、交流会当日。
まず、男女別れて更衣室に入ればそこには着付けてくれるお手伝いさんがずらりと並んでいる。
その人達に、各自持ち寄ったドレスを着させてもらい髪も綺麗に纏めてもらうのだ。
彼女のドレスは、裾には金の糸で薔薇の刺繍が施されている上がシルバー・下のスカート部が紺色のアンクル丈スレンダードレス。
元々すらっと体型の彼女に、そのドレスはよく映えた。
大胆に開かれた胸元に輝く真紅の薔薇のネックレスが目を引き、髪型も丁寧にふんわりと巻かれたサイドテール。
髪飾りもドレスに合わせた、薔薇にとまる蝶をイメージさせる手の込んだ装飾品。
大人っぽいその格好は、彼女の魅力を充分に引き立たせており、気品さを感じさせる程だった。
着替え終えた自分の格好を鏡でチラリと見た時、後ろから声が聞こえる。
「ほぅ…。やはり妾が選んだだけあるのう、似合っておるぞクロエ嬢」
「あら、貴方が褒めるなんて珍しいわね」
振り返れば、目を細め満足げに微笑んでいる理事長が居た。
因みに言うと、このドレスも前に開催された交流会で着ていたドレスも、全て理事長が選んだものである。
まぁ、理事長の目に間違いないだろうと彼女もそれに反論も反発もしなかった。
選んでもらった事へのお礼言ってから、仕上げとして、ファンデーションを少しと真っ赤なルージュを唇に引いて化粧をしてもらう。
準備を終えて、高めのヒールを履きけば慣れた足取りで更衣室を出る。
そこには着替えを終えた男子生徒だけでなく、女子生徒もちらほら居た。
辺りを見渡しパートナーである彼を探していれば、見覚えのある人影を見つける。
その瞬間。
いつもと違う彼の礼服姿に、微かな胸の高鳴りを感じた。
ボソリと「格好良い…」なんて言葉が漏れるほど、彼の礼服姿はとても似合っているのだ。
えっ、今のなに…。
なんか、ドキって…え？
初めての感覚に、自分自身に驚きを感じる。
彼も彼女を探していたのか、ふとこちらに気付き歩み寄ってきた。
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