第二十八話 ページ30
*
お昼休みの理事長室にて。
室内にいるのは、理事長はもちろんのことクロエとゼノがテーブルを挟んで座っていた。
クロエは、慣れた手付きでティーカップを片手に優雅に紅茶を飲んでいる。
けれどその優雅さは動作だけで、話の内容はとても優雅とは程遠いものだった。
「ねぇ、ゼノ。貴方変装してちょうだい？そしたらパートナーとして連れて行けるわ、私貴方とじゃないとダメなのよ。」
「なんかそれすっごい複雑な気分〜！俺相手だと照れないからってさ！」
話の内容と言えばただ一つ。
今日の朝に報告された交流会についてである。
理事長室について早々、なぜ今回だけ特殊なルールを付けたのかを問いただして、それからこの状況だ。
これを主催した当の理事長はと言えば、蚊帳の外にいるような様子で時折窓の外に視線を向けながら紅茶を飲んでいる。
一方ゼノは、彼女の発言にムスッと頬を膨らませていた。
「ていうかもうパートナー決まったんじゃなかった？」
「えぇ、まぁ…そうね。」
そう返事をすれば、微かに彼女の目を伏せる。
それは遡ること数時間前の事。
何故か知らないが担任の提案で誓約を結んだ者以外の生徒でくじ引きをして、パートナーを決めることになったのだ。
なんて提案をしてくれたんだこの人は…。
と、理事長以外にこんな恨めしい気持ちを持ったのは久しぶりである。
それにクラスの大半が了承してしまい、結局はくじ引きをする事になったのだ。
憂鬱な気持ちがじわじわと押し寄せてきて、もう何度目かもわからない溜息を零す。
それから自分の番になり、担任手作りのくじの棒を引っ張った＿＿＿＿。
くじ引きの結果。
「知ってるかもしれないけれど一応、クロエ・アルバートです。よろしく」
「エドワード・クロウ。こちらこそよろしく」
まさかのあの本の彼だったのだ。
1回も話したことが無い人より、少しだけ話した事のある彼がいいな。なんてくじを引く時に思っていたがまさか本当になるとは…。
自分のくじ運、恐るべし＿＿＿＿。
そして今。
「けれどまぁ、良かったではないか。彼奴なら大丈夫じゃろう」
「その自信は一体どこから湧いてくるのか是非とも教えて欲しいわ。そしてその自信を半分でもいいから私に分けて。」
先程まで「妾は知らぬ」見たいな顔をしていた人が何を言うか。
じとーっと、恨めしそうに見つめながらぼそりと呟いた。
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