第二十四話 ページ26
*
「……」
教室にて。
彼女は、小さく小さく溜息を零した。
なぜこんな状態になっているのか。
それは遡ること昨日＿＿＿。
気付けばいつの間にやら自分の部屋にいた事に驚きを感じつつ、彼の部屋に入って何があったのかを思い出そうとしていた。
けれどその度に痛む頭に、表情を歪めていれば
「…目覚めたのかえ。」
聞こえてきたのは頭に響く落ち着いた声色。
けれど彼女は視線をそこに向けることなく、ジーッと毛布を眺めた。
すると、突然口を開いた理事長から聞かされたのは記憶に残っていない部分。
倒れた事まで聞いたあと、怒りのような何とも言えない感情が込み上げてきた。
こうなる事を分かっているのに…なぜこの人は。
なんて、考えても分からないことをつい考えてしまうのは何故だろうか。
理事長の考えている事など理事長にしか分からない。
ましてや今理事長が何処まで見通しているのかも分からないのだ。
「私がこうなる事を分かっていながら、持って行かせた理由を教えて頂けるのかしらねぇ…」
「……克服してほしかったのじゃよ、いずれはクロエ嬢も我等と誓約を結ばなくてはいけなくなるゆえ…何処ぞと知れぬ輩より顔見し「余計なお世話よ！！」っ…。」
「私は誰とも誓約は結ばないわ。自分の身は自分で守れる…だからもう、放っておいて。」
やっと視線を理事長に向けるが、その目付きはとても冷えきっている。
けれどその瞳が、不安、恐怖、助けそれらの感情を含めたように揺れていた。
そんな彼女を見て、珍しく困ったような表情を浮かべれば「それは聞けぬ願いじゃ。約束してしまったからのう…其方の“母親”と」そう口から零れるように呟かれた。
理事長のその言葉が、今の彼女にずんっと重く重く伸し掛る。
「人間は酷く、醜く脆いものじゃ。自我の欲に狩られその衝動を抑えることも立ち止まる事もせぬ。
特に“その血”を持つ人間は、
【回想終了】
分かってる…分かっているわ、そんな事を言われなくたって。
だけどしょうがないじゃない…あの記憶が消えない限り、私には無理なのよ。
そんな事を思いながら、そっと窓の外に視線を移した。
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