第十二話 ページ14
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彼に話しかけて本を渡していると、周りからの視線が一斉に集まった。
鈍感な彼女でも、流石に視線などには敏感らしく直ぐにその事に気付いたのだが、本人は気付きたくはなかったらしい。
それもそのはず、視線が集まっていると言う事は注目されているという事。
なんなのよ！そんなに見られると恥ずかしいじゃない…っ！！
そう心中で叫んだ。
注目されていると言う恥ずかしさから、じわじわと頬に熱が集まるのを感じ、何とかその現象を抑えようと試みた。
けれどもそう上手くいく訳なく、更に顔が暑くなっているようにも感じる。
まぁ、何故そんなに注目されるのかと言われればそれは当たり前の事だった。
あれだけ人を寄せ付けない(雰囲気だけ)彼女が自ら話しかけているのだ。
寧ろ驚かない人の方が珍しい。
女子の中にはコソコソと訳の分からない言いがかりを付け何かしら言っているやつもいて、内心溜息をつく。
ほんと、馬鹿みたいだわ。
それが原因で顔の熱も徐々に下がり、再度「ありがとう」とお礼を言ってから踵を返したその瞬間。
いや、正しくは踵を返そうとした途中。
彼が先程まで読んでいた本のタイトルが視界の端に写った。
「っ…！？」
口から出そうになった驚きの言葉を何とか飲み込んで、本のタイトルを凝視する。
流石にそんな彼女の様子をまじかで見ていた彼は、不思議そうに首を傾げていた。
「その本、読んだことあるわ」
何とか平然を保ちつつ、そう呟いてから1度だけ視線を本から彼に移す。
けれども直ぐに視線を本に戻した。
何故人は争うのかについて様々な観点から書かれている論文の様な内容だったその本。
まさか読んでいる人がいるなんて思いもしなかったらしい。
「…いい本よね」
このままでは喜びのあまりいつもの自分が保てそうにない。
そう判断した彼女は、上記の言葉を言い残して自分の席へと戻って行った。
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