【H×H】マドンナリリーの花を君に贈る。２ (ページ14)

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「父様、ゼノ爺様、後10秒お待ちくださいね？」

私はにっこりと笑って、戦ったことが原因でボロボロな彼らの間に立つ。

壁に打ち付けられているのは先日も会った団長さん。

そんな彼に今にもトドメを刺しそうだったのは、父様とゼノ爺様だ。

「…Aか。」

「さては、あの子の差金じゃな？」

「そうですよ。流石にお二人も同時に相手にしたんじゃ時間稼ぎも容易じゃないだろうと派遣されました。」

十老頭というマフィアの頭組織はゾルディック家に幻影旅団の殺害を依頼した。

しかし、団長さんもとある依頼をしていた。

それを請け負ったのは＿＿＿＿

『A兄様、イル兄の依頼が完了しました。』

団長さんとも個人的な交流があるらしい、イル兄だ。

ほぼ同じタイミングで父様の方にも電話がかかってきており、そちらは恐らくイル兄だ。

「うん。連絡ありがとうカル。気をつけて帰るんだよ。」

『はい。兄様も。』

通話を切ると共に、巡らせていた念能力の『円』を解く。

同時にこの場を支配していた緊張感も霧散した。

そう、団長さんはイル兄に十老頭の殺害を依頼していたのだ。

カルも、イル兄に付いて任務をこなしたのだろう。

「…A。」

「はい。イル兄からのお電話ですか？」

「ああ、任務は中止だ。」

「それにしてもA、ワシら3人の動きを止めるとは強くなったのぅ。」

「お褒めに預かり光栄です。」

身体のチリを簡単に落とした父様が、私の頭を軽く撫でる。

そして何も言わぬままこの部屋を出て行った。

彼らの気配が完全に消えた事を確認しふっと気を緩めた時、口に血の味がむせ返る。

「ぅ、っげほ…っ…！」

「え、」

口を手で抑えながら膝をつく。

ぼたぼたと手の平の隙間から赤黒い血が滴った。

「ちょ、死ぬのか…！？」

丸まった私の背をさする彼は、もう少し私に感謝してもいいと思う。

父様とゼノ爺様、そして一応彼の3人の動きを完全に止めるのは、今の『誓約』では弱かった。

通常の人間なら1000人、ある程度の念の使い手でも10人くらいは余裕であるはずの私の能力行使は、彼ら3人同時にはとてもじゃないが出来なかったようだ。

「…死には、しないから…放っておいて、くれていい…。」

「…この場で放っておいたら俺がマチに殺される。少し待ってろ、水盗ってくるから。」

……イル兄、これ割に合わないよ。