四十八柱 ページ48
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抵抗するために手で離れようと試すものの、力を入れることで症状が悪化する。
両手で胸元を力の限り押しているというのに、ピクリともしない。
「はっはっは、愛らしい抵抗よなあ」
「みかづき、さま、ご容赦…ください…！」
「おや、表情が今にも歪みそうだが…よいのか？」
「…っ、」
わざとらしく顔覗き込んできた彼に、グッと唇を噛む。
悠々と細められる瞳に、ざわりと背が泡立った。
「よしよし、そのまま安静にな」
結局、彼の力に叶うこともなく彼の胸に寄りかかる体制で落ち着く。
大人しくなった私に満足そうに笑みを湛える彼に、狩衣の袖丈で顔を隠すように頭を撫でられる。
それをいいことに一つ息を吐き出した。
「主よ、普通の手入れはな、乱や青江のようにあそこまで傷一つ残らず治るものでは無い」
「…傷一つない手入れだって？そんな事をしたらいくら霊力があったって足りないじゃないか！」
「ほれ、燭台切もこう言っておる。青江に聞いたが、そこまで丁寧にしなくて良い」
ゆっくりと頭を撫でられながら、三日月様の言葉を反芻する。
なら、どんな状態まで直したら手入れが完了でいいのか。
そんな疑問が湧き、口を開こうとしたが遮られた。
「通常の手入れはな、欠けているのを治すだけで良いのだ」
「ですが、それでは軽傷と何も変わらないのでは…」
「…その為の部屋がここ、手入れ部屋なんだよ」
三日月様の説明に疑問点を上げれば、それに答えてくれたのは燭台切 光忠様だった。
彼の方に顔を向けるため…というのを建前に三日月様の元からさりげなく離れようとしたが、解っていたとでも言うように身体を固定されてしまう。
「手入れ部屋っていうのはね、本丸の中で一番審神者の霊力が集まっている場所なんだ。だから通常は、この部屋に入っていれさえすれば怪我は治る」
「軽傷は確実だぞ。中傷は時間が膨大にかかるが治らんこともない。流石に重傷は厳しいがな」
「…手入れをせずとも、治るのですね」
「それはちと違うなあ。手入部屋に入っている事自体が、刀剣男士からすれば手入を受けるということと同意義だ」
彼らの説明を聞き、納得する。
普通なら、軽傷程度の傷は手入部屋に入り自己修復を待つらしい。
審神者が直接手入するのは、重傷や中傷を負ったものが主であるようだ。
つまり、私は軽傷という状態になるまで治せば基本的には手入れという業務を終えたと言っていいのだろう。
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作者名：甘夏蜜柑
| 作成日時：2019年4月10日 21時
