四十柱 ページ40
．
「三日月 宗近様、今、私を主にすると…」
「ああ。言ったが？」
恐る恐る、確認の言葉を目の前の刀剣男士に投げかけた。
しかし即座にそれがなんだ、とでも言いたげな表情でそう返されて思わず手拭いを持たぬ方の手で額を抑えそうになった。
他の刀剣男士が次々にざわついていく空気を感じながら、目を瞑って、ゆっくりと5つ数える。
それから肺に入っていた空気を全て吐き出して、瞳を開けた。
…仲違いをさせるのは良くない。
だが、私に味方が必要なのも事実。
今はしょうがないと諦めるしかない、か…？
そんな風に己を納得させて、目の前の彼に真っ直ぐと向き合い、手をついて頭を下げる。
その体制のまま、心を込めて言葉を吐き出した。
「わかりました。この矮小なる人の子に、三日月 宗近様の御力をお貸し下さいませ」
「あいわかった。三日月と呼ぶといい、我が主よ」
「はい、三日月様」
迷いのない返事を聞き、それから上座の方へと体を直した。
三日月様は、私の斜め後ろにて座り直したようだ。
「話し合いの本題に入らせていただきたく思います。鍛刀部屋と手入部屋、そして離れの使用許可をいただけませんでしょうか？」
未だに信じられないというような表情を浮かべた刀剣男士達が、私の声にまた少しざわつく。
耳が拾った情報をまとめていくと、やはり三日月様は彼らをまとめる立場であったようだ。
それ故に、私の方へ着いたという事に動揺するものが多いのだろう。
この短時間で、私が三日月様に対して呪いを使用したのではないかという声も上がっていた。
「…好きにするといい。だが、こちらには関わらないでくれ」
神様方を代表として言ったのは、鶴丸 国永様だった。
シン、と静まり帰る広間。
全身を真っ白な衣装で包む彼は、名の如く鶴のようだった。
彼は立ち上がって、段差になっている上座から足を投げるようにして座った。
そして、膝の上に右肘を突いて頬杖をする。
良く見れば、血の滲んでいる場所や汚れている場所がいくつもあり、彼も被害にあっていたのだと容易に想像できた。
金色の瞳は酷く荒んでおり、私に対する嫌悪を隠そうともしていなかった。
底なし沼のような低い声は、うんざりとでも言いたげな響きが含まれていた。
…ああ、やっぱり神様は怖い。
そんな風に思って仕舞うのは、仕方がないだろう。
「ただし、条件がある」
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作者名：甘夏蜜柑
| 作成日時：2019年4月10日 21時
