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二十六柱 ページ26




渋々準備ができたと目で合図をすれば、コンは私の肩に乗った。

目を瞑り、頭に思い浮かべるのは鍛刀部屋。

胸元で合わせていた手を離し、間を空けずに打つ。


パンッ


ぶわりと頰を熱気が撫ぜる。

思わず目を開けば、目の前には火が轟々と燃える窯があった。

どうやら、成功したようだ。


「早速、式神を呼んで鍛刀していただきましょう…!」

「式神を呼ぶの?」

「はい。鍛刀は式神がこなします」


コンが言うには、霊気が鍛刀部屋に足りないために、式神様が姿を表せないのだとか。

なので、壁に手を当てて霊気を流し込む。

バケツの水をギラギラにした時から、散々練習してきたので集中せずとも片手間に流し込むのはできるようになった。


「汚れてはいないけど埃がすごいね」

「はい、掃除をしなくては…おお!式神が姿を表しましたよ!」


ふわり、ふわりと宙に浮く淡い光が4つほど私の目の前に並ぶ。

目を凝らせば、人型に近しい姿をしており、愛らしく笑っていた。


「はじめまして。10日ほど前にここの審神者になったものです。こちらで鍛刀をして頂けると聞いたので伺った次第です」

「…久しぶりに見ましたよ、審神者様の余所行きの態度」


ゆっくりと一礼すれば、くるくると思い思いに飛ぶ式神様。

コンがいうには、式神様は喋ることはなく、基本的には協力する気がなければ姿を見せないらしい。

またしても式神に敬語入らないと力説され、式神たちも肯定するように頷いていたので外させてもらった。


「では資材の量を決めてください」

「…資材の量?」


資材は全部で四種類。

木炭、玉鋼、冷却、砥石。

これらの配合によって担当できる刀が違うのだとか。


「ふた振り、資材値はなんでも構いませんので鍛刀してくれる?」


そう言って金平糖の袋を近くの机の上に置いた。

式神は少し困惑した様子だったが、しばらくして心得たと言うふうに頷いてくれる。

私は、掃除道具を取ってこようと一度離れに戻った。


「っあ、」


カタン、と閉まっていた障子が音を立てる。

それとともに、微かな声が聞こえた。


…あれ、ここ離れだよね?

私が自室として使っている部屋だよね?


一瞬動揺するが、別にこの離れは敵意さえなければ入れるのだから誰かがいてもおかしくはない。

…つまり、この影の持ち主は敵意がないと言うことになる、はず。

結界が、正常に作動しているなら。

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作者名:甘夏蜜柑 | 作成日時:2019年4月10日 21時

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