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「カットー！！ 本日はこれで終了になりますーす！！！ 」
今の時刻は、23時49分。予定よりも遥かに遅く終わったのは私の交渉術のおかげと言っても過言では無い。
「監督、リスケの余裕ってありますか？ 」
「リスケ？ いやぁ、色々押してるからなぁ……どうしたの？ 」
「明日の撮影を早めに終わらせたいんです。今日の分撮り終えた後に明日分の撮影少しでも詰め込めませんか？ 」
「…まぁ、明日は万葵さんのソロだけだから出来ないことも無い、けど…」
「宣伝の媒体、なんでもやりますよ。いつもなら他のキャストさんにお任せしてますが、今回ばかりは無理なお願いのお礼として、」
「ぐ、なるほど……」
自分の使い道なんてよくわかってる。私が今まで築き上げてきたこのキャリア、存分に活かせるものは活かしてやろう。別にもう、隠れる必要なんてないのだし。
「帆乃花、起きて、終わったよ」
「んん、……ぅ、おわった、？ 」
「遅くなっちゃってごめんね、帰ろ」
真っ暗な楽屋で丸く眠っていた帆乃花をそっと起こす。限界が来ていたのか、帆乃花は追加撮影に入る頃には楽屋に籠っていた。
「明日の撮影カット、今日で全部撮り終えたから明日はオフだって」
「え、全部？ 」
「うん。なんかスムーズにいったみたいでさ、」
まぁ、嘘。
出番を待つ間は別セットでソロカットを撮り、合同シーンでは一度もNGを出さなかった。休憩は全てソロ撮影で埋まり、朝6時からこの時間まで、気づけば私はフルで演技し続けていたらしい。全ては可哀想な二人のためだ。
「あ、そうだ、涼太くんとお出かけしてきたら？ 」
「涼太と？ 」
「ろくにお祝いしてないんでしょ？ 涼太くんの誕生日」
「まぁ…確かに」
「たまには姉弟で休日を楽しんできなさいよ」
私は家で優雅にオフを満喫してるからさ。ほとんど寝てるだけだろうけど。
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作者名：風呂 | 作成日時：2023年1月29日 15時
